多くの教育で習得できるのは問題解決そのものではない
この「真の問題に気づく力」は「どこでつまずいたのか?」「なぜ解けなかったのか?」と一歩立ち止まって考える癖がつくだけで大きく進歩するものです。
言葉は悪いですが、「本当の問題に気づいた後」は問題解決ではなく、問題解決を実現するための「作業」です。教育の多くは、この「作業」を正確に覚えて、こなす力を身につけるためのものです。この教育を受けてくると、「何をしていいかわからないような問題を与えるほうが悪い」という感覚になります。しかし、実際は「何が問題なのか?」に気づくことが一番難しく、気づいてしまえば人海戦術でもなんでもでも最初に取り組んだものが勝つのがビジネスなのだと言えます。
解決できなくても「これが問題だ」と宣言することの意義
クラウド名刺管理サービスを提供するSansan(サンサン)という会社があります。大きな会社内で社員各自が管理している名刺をデータ化して一括管理することで、「A会社の□□さんは、実はうちの会社の△△さんと繋がっていた」という機会を創出しています。
この会社はいまでこそ「名刺をスキャンするだけで99.9%でデータ化」と謳っていますが、創業当時はなんと送られてきた名刺のスキャン画像を見ながら人間が手入力していました。
つまり、「会社内に散在している名刺を一括管理すべき」という問題を発見していても、その解決策はほとんど持っていなかったと言えます。しかし、彼らの設定した問題は、ほとんどの会社が抱える「真の問題」でした。そこにいち早く気づいて、取り組んだことで当初は人海戦術であったとしても、経験が蓄積され、そこから生まれる効率化のノウハウで現在の地位にたどり着いたのです。
たとえすぐには解決できなくても、
- 「これが問題だ! これを私は解決する!」
と宣言してしまえば、そのための努力をしているうちに色々なところから
- 「こうすればいいのでは?」
という情報が集まってくるものです。問題が設定されていないので使われていない知識や技術は、世の中や個人の中にたくさん眠っていると言えます。
「いつ使うのか?」「何のために使うのか?」と出会えていない「解法」は死んでいるのと同じです。
私たちの教育は、「今日はプラスドライバーの使い方」「今日はトンカチの使い方」というように習ってくるものですが、実際には、「今日はどれを使えばよいのか?」という大前提からスタートするのです。
「模範解答を理解するだけではなく、なぜこの解法を思いつくのか? まで理解できるかを確認しましょう」
この時期、学習塾の自習室で過去問に取り組む生徒たちに常にかけられている言葉です。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら