稼ぎ頭としての「真似」、投資の性格を帯びた「新規開発」
では、2番手戦略の難しさはどこにあるのでしょうか? 今回は、数多く指摘されているなかで「人材確保の難しさ」について考えてみたいと思います。
すでにある技術・製品に学び、真似することは言うほど簡単なことではありません。先行企業の所有する研究情報がないわけですから、同等レベルかそれ以上の技術者が必要です。しかし、そのようなレベルの技術者を「2番手」戦略のために集めるのはモチベーションとしてかなり難しいのです。松下幸之助も、「フィリップス社から学ぼう」という方針を自社の技術者に納得してもらうのに苦労したという話が残っていますし、ドイツのロケット社においては、その企業方針から多くの技術者が同社から離れてしまいました。
かつての日本は、社会全体に、「真似をして、追いつくことで、人生が豊かになる」という雰囲気がありました。「真似」が恥ずかしいことだという雰囲気はほとんどありませんでした。また、2番手商品は、市場が大きければ大きいほどコバンザメとして成功が大きくなる性質があります。
日本という市場への使命感と、閉じた島国内で「世界レベルのことをやっている」という高揚感、そして市場の大きさによる経済的成功が大きなモチベーションになっていたことは間違いないでしょう。
優秀なIT技術者が集まる米シリコンバレーでの起業でも一番多いのは、「すでにあるサービスの改良版」だと言われています。そういった起業が多くなるモチベーションは、大きな金銭的な成功が土壌としてあるからです。
しかし、かつての日本のような経済的な条件は、アメリカの一部や中国本土など限られたところでしか成立していません。「オリジナルこそ大事」という考えと、「中の上」のレベルにある商品を支える中流人口が減少している日本では、TESLA(テスラ)を徹底的に分解した安い改良品を出せる技術者もいませんし、そのようなモチベーションも持ちにくいでしょう。中国ではほぼ同時進行で、かつての日本のような「追いつけ、追い越せ」で電気自動車が用意されています。
- 「2番手戦略はなんとなく気恥ずかしい、しかも成功報酬も少ないし。やはりオリジナルでいくべきだ」
今の日本企業はなんとなく、夢見がちな、中学生のような思考に陥っている気がします。稼ぎ頭としての「真似」と、投資のような性格のある「新規開発」というポートフォリオを経営者から技術者までバランスよく受け入れる土壌を作ることが、「続く企業」として求められている時期だと言えます。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら