漫画を読むことを習慣化する
ビジネスパーソンと漫画について考える。四半世紀前、テレビによく登場する著名な経済学者が講義でこう言ったそうだ。
「日本のビジネスパーソンでは、中高年は漫画を、若者は転職情報誌を読んでいる」。大学内でちょっとした話題になった。中高年は既得権益層で悠々としており、それを嫌がって逃げる若者という構図でもある。コロナ禍で必ずしも通勤しなくなっているし、いまや電車で人々が手にするのは雑誌でも新聞でもなくスマホという時代だが。ただ、この発言は漫画を低く見ているかのようにも聞こえる。
いまや、漫画は日本のサブカルチャーどころか、メインカルチャーである。昨年は『鬼滅の刃』の大ヒットをはじめ、漫画の存在感を強く感じる1年だった。コロナ禍によりステイホーム期間が長かったこともあり、漫画を読んだ人も多いことだろう。
緊急事態宣言が再発令された頃から、私は1日1冊漫画を読むことを自分に課している。少しでもリラックスするため、魂を解放するために始めたルーチンである。漫画は情報収集の手段でもある。作品によっては、知識をインプットする機会にもなる。もっとも、漫画を読んで逆に気持ちが落ちたりしてはいけないが。
ちなみに、私は電子書籍で読むことにしている。読み終わった後、古本屋に売ることができないが、とはいえ、場所をとらないし、割安なので便利である。読みたいと思ったものをすぐ読むことができる。電子書籍だけの、特別編集の企画ものや、カラー化された作品などもあるのが魅力だ。
「ONE PIECE」に見る人材マネジメント
漫画を読むということは、時代を捉えるということでもある。以前の『週刊少年ジャンプ』といえば「友情・努力・勝利」が作品に貫かれていた。ただ、前出の『鬼滅の刃』などは「人情・堅実・救済」が本質だとよく評価される。これも時代の変化だ。
以前、就職ナビの編集長だった方に直接聞いた話だが、彼は在任中、学生が読みそうな漫画雑誌を毎週、全て読むことを自分に課していた。若者の気持ちを理解するためであり、講演などをする際のつかみのためである。涙ぐましい努力だ。
組織や人材のマネジメントのヒントにもなる。『ONE PIECE』という作品で主人公のルフィが「海賊王に、俺はなる!」と叫んでから24年になる。私が社会人になった年に始まったこの作品は、大ヒット作になったが、会社員時代の同期が出世して、ついに社長になる人まであらわれる中、ルフィがずっともがいているのは胸が痛む。まるで万年平社員じゃないか。それはともかく、同作品は2000年代にベンチャー企業などで、人材マネジメントの参考になった。大きなビジョンを提示すること、互いの個を尊重し、リスペクトしあうことなどである。