ローカリゼーションマップ

社会問題を解決するために 「ビジネス以外の道」を知っている頼もしい人たち

安西洋之
安西洋之

 パンデミックに突入してのこの1年半、マスメディアやソーシャルメディアでさまざまな意見をみていて少し変わりつつあると思うことがある。

 企業論理の優先的扱い、もっといえば一本調子の経済合理性にちょっとばかりの綻びをみつける人が増えてきている。必ずしも、経済合理性に真向から論争を挑もうというのでもない。

 性別の問題、女性の働く環境、子どもの学習の仕方、食生活のレベル…議論すべき項目の数は膨大にあり、それらはあまりに広範囲で一見、これらがお互いに関係するかどうかはわからない。

 しかしながら、「あれっ、これは企業優先の論理で私個人の生活の論理にのっていない!」とふと気がつくシーンが増えているようだ。それで相変わらず「ビジネスこそが社会問題を解決する」と信じて疑わない顔をしている人の姿がだんだんとぼやけてみえてくる(いってみれば、過去の人として古臭くみえる)。

 もちろんビジネスが多くの社会問題を解決する可能性は高い。だが、それを強調しがたいために、それしか道がないと宣伝しまくるのがいただけないのだ。

 常に「それ以外の道」が存在してはずだと熟考する姿勢が欲しい。学びへの意欲があり、謙虚さを示すことだ。それでないと傲慢になる。

 実は、その文脈で考えると、今、時代への感性が研ぎ澄まされているのは農村に住む人ではないだろうか。とっくの昔から経済合理性やビジネスだけで社会が動いているわけでないことを肌身で知っている人たちだ。

 このような人たちこそ頼もしい。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?:世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
note:https://note.mu/anzaih
Instagram:@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。

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