社長を目指す方程式

“ブレない”リーダーは危険? 周囲を納得させる最強の決断方法

井上和幸
井上和幸

 「手続的正義」による決断プロセス

 では、どうすれば「手続的正義」を導き出す意思決定ができるのか。橋下さんは、次の3ステップで判断、決断することだと紹介しています。

 ①立場、意見が異なる人に主張の機会を与える

 ②期限を決める

 ③判断権者はいずれの主張の当事者にも加わらない

 いつまでに決めるかの期限を明確にし、その間さまざまな対立意見をしっかり出させる。侃侃諤諤(かんかんがくがく)やる中で、リーダーはそれぞれの主張にしっかり耳を傾け、最終的な決断を下す。「衆議独裁」という言葉がありますが、みんなで議論し、最後はトップが一人で決める。これが大事です。

 橋下さんは、議論においてはさまざまな意見を持つ人を集めることと、オープンな場で議論することを主張しています。これも非常に重要なポイントです。個別に議論したりすると、結局どこかで情報がねじ曲がったりして最終的なコンセンサスを得られなかったり、陰口が蔓延(まんえん)したりします。

 もう一つ、橋下さんが大阪府知事時代に徹底していたことは、「決めたことには従ってもらう」ことを必ず約束してもらうことだったそうです。あなたの会社にも、いませんか? 決定されたことに対して「俺は反対だった」と言っている人。中間管理職にはこの手の人が結構いたりしますが、その時点でリーダー失格だと思います。

 「ブレない」リーダーよりも「修正できる」リーダー

 リーダーの仕事は決めたら終わるかといえば、そうは行きません。決めたことの周知、そして実行。実行してそのままうまくいけば良いですが、必ずしもそうもいかないのもまた、リーダーのしんどいところです。

 ときには実行してみて、決めた内容が望ましくなかったり、途中で間違っていることが分かったりすることがあります。そのとき、一度決めたことだからと何が何でもそのまま進めることが正しいのでしょうか?

 橋下さんは、強いリーダーは「ブレない」人ではなく、みんなを「納得させられる」人だと強調しています。

「リーダーのあり方として、世間では『ブレてはいけない』とよく言われます。周囲を引っ張るリーダーは、最初から絶対的に正しい方針を示すのがよいと思われているのでしょう。これは実体的正義の考え方です。しかし僕は、判断を間違えたらすぐに修正します。『朝令暮改でも構わない』と思っています」(『決断力』より)

 ここで大事なことは、修正する場合も適切なプロセスを踏んで修正のための判断をすることです。

 自分の意見や主張にこだわりすぎるリーダーのほうが見誤る可能性は高いです。特にいまのような不透明で、状況変化がコロコロ起きるときには、自分の主張にこだわる「ブレない」リーダーよりも、もし間違いがあったら「すぐに認めて修正する」リーダーのほうが、信頼できるし、結果としてよい成果を残すでしょう。

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