ローカリゼーションマップ

「共感を呼べ!」と叫ばれる今 人のいない風景を追うカメラマン、グレゴールの作品に思う

安西洋之
安西洋之

 サステナビリティという言葉が世界中に出回っている。主に地球環境に紐づいている。だが、よく見ると地域ごとに動機は微妙に違う。

 例えばスカンジナビア圏では温暖化対策としてのニュアンスが強い。一方、南ヨーロッパでは「美味しい農産物を食べ続けたい」「美しい風景を失いたくない」との動機から、サステナビリティに関心をもつ。

 他方、北極圏にあるロシアやカナダは温暖化により経済的恩恵がもたらせられる可能性が高い。「地球のことを考えよう!」と言いながら、それぞれに違った思惑が働いており、地球のことだから世界の人たちの考えが同じというわけではない。

 新興国の人たちが「脱炭素は先進国に適用すべき政策」と主張するのも、先進国がさんざんと地球資源を使い果たし地球を弱体化させた責任を「なぜ、我々も同じように負わないといけないのか」との思いがぬぐえないからだ。

 グレゴールは自身では一切そういうことを展覧会のカタログに書かない。標高2300メートルの場所で窓の外の雲を横目に眺めながら、零下55度の地域を静かに撮り続けてきた写真を見るようになっている。

 彼はカナダ、ロシア、デンマーク/グリーンランド、アイスランド、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンの各国軍事機関と交渉し、撮影許可のおりた国の軍用機で各地域に飛んだ。そのエネルギーを写真から感じる。

 作為的な「共感を得よう!」に若干疑いの目をもって接するのが良いかもしれない、と思わせてくれる。そんな経験だった。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?:世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
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note:https://note.mu/anzaih
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。

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