「ビジネス視点」で読み解く農業

夢のような戦略!? 農業課題30年後の農業ビジョン「みどりの食料システム戦略」を解説

池本博則
池本博則

■「みどりの食料システム戦略」が目指す30年後の農業とは?

 では、「みどりの食料システム戦略」が目指す30年後の農業とは一体どのようなものなのでしょうか? 壮大なプロジェクトを端的な「目指す姿と取り組み方向」として農水省がまとめてくれている表が下記のものとなります。

 この表が最も「みどりのシステム戦略」の全貌と具体的な目標がわかりやすいものだと思っていますが、具体的に内容を掻い摘んで説明すると

「革新的な技術・生産体系を作り出して、環境にやさしく地産地消型のエネルギーシステムを作り、農林水産業・地域の将来がいきいきとした持続可能な食料システムを創ろう!」

 ということになります。

 とても壮大ですよね。でも実現できれば農林水産業にとって、地域社会にとって、日本に、地球にとって素晴らしいイノベーションになることは間違いないのです。しかし非常に道は長く、そして厳しいものでもあります。

 例えば「耕地面積に占める有機農業の取組み面積の割合を25%(100万ha)へ拡大」とありますが、現在何%かみなさんご存じですか?

 日本の有機農業は、2017年時点で、耕地面積当たりの有機農業の取り組み面積(有機JAS認証取得面積のみ)は全体の耕作面積のなんと0.2%程度にとどまります。

 有機JAS認証を取得していない面積も含めると0.5%。これに市民農園や家庭菜園なども含めるともう少しは増えるでしょうが、おそらく微増する程度となっています。この水準を25%へ拡大するというのは大きな革新が生まれなくてはとても途方もない目標のままとなる可能性があるのです。

■絵に描いた餅にしないために「他人事にしない」

 前回の農業DXのご紹介でも挙げた通り、スマート農業をはじめ農業を取り巻くイノベーションは日々進化をしています。今、この瞬間でも日本全国のほ場で生産者と技術者の方や研究者の方での技術革新の息吹は生まれはじめています。

 それぞれの日本の生産現場においては「みどりの食料システム戦略」が策定されていなくても情熱を持って、20年後、30年後の未来を願い取り組んでいる人が沢山存在しています。

 ぜひ、今回の戦略がただの政治や活動家の絵にかいた餅になるのではなく、生産現場に反映されて、現場を中心として実行される戦略になって欲しいなと切に願っています。

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