今日から使えるロジカルシンキング

「革新的イノベーションで企業は成長せず」に賛否 情報に踊らされない人の思考法

苅野進
苅野進

高校生が立てた仮説

 私が運営する学習塾ロジムの授業で、高校生が挙げてくれた仮説を紹介します。

  • 革新的だからといって高価格になってしまった
  • 革新的なものを、どう使うかを説明するような適切な販促活動ができていない
  • 日本が経済的に厳しいので、高価格な革新的製品を買えない。アメリカなら売れたのでは?
  • 販売場所がない。つまりそもそもニーズがなかったのでは?

 いかがでしょうか? 高校生にしてはなかなか鋭いと思いませんか? いずれの可能性も捨てきれないものですので、しっかりとした検証が必要です。その検証無しに、「革新的イノベーションを実現したというような製品は、企業成長には役立たないので必要ない」などという結論には到達できません。

 分析では「革新的イノベーションを実現した製品の市場があったのか?」という「問い」に関しては言及がありました。私たちビジネスの現場にいる人間は、この「問い」をしっかり立てて、次の分析へと繋げていくことが重要です。都合のよい解釈をして、持論を補強する形で使ってしまうのはデータの活用において一番避けなければならないことです。

「AだからBである」を見たときのチェックポイント

 「AだからBである」という命題を見た時に、まず

  • Aとは何か?
  • Bとは何か?

 を確認することが必要です。また、

  • それは本当に因果関係があるのか?
  • 因果関係があるとして、原因はAだけか?

 の2つの視点でチェックを入れる必要があります。

みなさんも、刺激的なコピーに反射的に反応してしまうことなく、冷静に読み解く姿勢とスキルを高めて欲しいと思います。

苅野進(かりの・しん)
苅野進(かりの・しん) 子供向けロジカルシンキング指導の専門家
学習塾ロジム代表
経営コンサルタントを経て、小学生から高校生向けに論理的思考力を養成する学習塾ロジムを2004年に設立。探求型のオリジナルワークショップによって「上手に試行錯誤をする」「適切なコミュニケーションで周りを巻き込む」ことで問題を解決できる人材を育成し、指導者養成にも取り組んでいる。著書に「10歳でもわかる問題解決の授業」「考える力とは問題をシンプルにすることである」など。東京大学文学部卒。

【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら

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