さらに気になることがある。欧州で殆どアート思考を耳にしない。何人かの知っていそうな人に尋ねた。すると以下の答えだ。
「6-7年前、アートをビジネスの発想に適用しようと流行る気配があった。だけど、いつのまにか聞かなくなった」とイノベーションを専門とする経営学の教授は話す。
「米系戦略コンサル系の特定の会社の人たちだけが、その言葉を使っているのを聞いたことがあるわ」とアートビジネスに詳しい別の教授がコメントする。彼女は「米英系資本主義におけるネタの枯渇が、そういうターミノロジーを必要とするのよね」とコメントを加える。
チーム構築の支援コンサルタントをしている女性は、デザインやリーダーシップの教育動向をフォローしている。その彼女も「そういう言葉は聞いたことがない」と答えながら、「どこかの戦略コンサルタントが仕掛けたのね」と冷淡だ。
即ち、日本で官民ともに「アート思考だ!」と言っている熱気とは程遠い。
ぼくはアート思考が巷で喧伝されるようになった頃、これはデザイン思考の脇の甘さを突かれたのだと思った。
「デザインはセンスや美とは関係なく、多くの人がロジック以外で合意形成を図れるツールなのです」と盛んにプロモートした。そのために、デザイン議論で欠落している美の部分をアート思考が攻め入った。
そう、直観が働いた。