大丸有スタートアップ・レポート

ヒトが世界と直接つながる IoTのその先「IoP」が拓く未来 (1/3ページ)

万象寛子
万象寛子

 スタートアップ企業憧れの存在といわれる企業がある。生体認証を活用した支払い決済やホテルのチェックイン、銀行・証券会社の口座開設など、日常の様々な場面における本人認証サービスを提供するELEMENTS(エレメンツ、旧社名:Liquid、東京都千代田区大手町、代表取締役社長:久田康弘氏)だ。同社の生体認証サービスは既に普及・拡大期にあるが、同社は「IoT」(Internet of Things)のその先、ヒトが世界と直接つながる「IoP」(Internet of Persons)の社会を標榜。新たな挑戦を続ける。

 カメラのセンシング技術に着目

 ELEMENTSの創業は2013年。社長の久田氏が、慶應大学卒業後に勤めた投資銀行で20件程度の株式公開を手がけたのち、いくつかのウェブアプリの開発・売却で資金を蓄え、26歳で起業した。「学生時代も投資銀行時代も、常に近くに起業家がおり、起業するのが当たり前のような環境にいた。投資銀行時代もベンチャー企業の担当。類似体験を重ねるうちに次第に起業にめり込んでいった」と久田氏は振り返る。

 「生体認証」に着目したのは、キーボートがついていないデバイス(通信端末)を見たのがきっかけ。当時、携帯電話といえば“ガラケー”で、小さな画面と文字を打ち込むための小さなキーボートが付いているようなときだった。「衝撃だった。そのデバイスは、キーボードが付いていなくて代わりに大きなカメラがついていた。なるほど、これからは人が手で入力するのではなく、カメラが代わりになるのかと」(久田氏)。カメラの性能は、今後、間違いなく向上していく。そうなれば、人々が携帯電話のキーボードに文字を打ち込んで情報を入力するのではなく、カメラを通じてさまざまな情報が取得・入力されていくことになると久田氏は確信した。

 カメラでセンシングできれば便利になると思ったのが「人間」に関する情報。例えば、服を買う際、お店に行って試着をすればサイズを正確に把握していなくてもいいが、インターネットで服を買うにはサイズを選ばないといけない。また、店頭では本人が顔写真の付いた身分証を持っていけば本人と確認されるが、ウェブではそれができない。究極は「顔パス」。フェイストゥフェイスの現実の世界では、見知った間柄において顔だけで「本人」と認証されるのに、ウェブの世界では毎回ID・パスを入力し、場合によっては本人確認書類を郵送したりしなければいけなくなる。「現実の世界ではできるのに、ウェブの世界ではできないことが多かった。ウェブと現実社会が融合していくなかで、現実の世界でできることをウェブでもできるようにする、人間に関する情報、生体認証を使って不都合を解決していこうと考えた」(久田氏)。

 家に入るとき、金庫をあけるとき、銀行から預金を引き出すとき、インターネット上で支払いをするときなど、生活の様々なシーンで、鍵やパスワード、カード、PINコードなどを用いた本人認証が必要となる。それを、生体情報を活用して、「本人が本人であること」を証明できれば、鍵やパスワードは不要となる。つまり、スマートフォンなどの端末を通じてインターネットとつながる「IoT」(Internet of things)のその先、ヒトがインターネットと直接つながる「IoP」(Internet of Persons)の実現である。

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