Fromモーニングピッチ

ニューノーマルの働き方に照準 「時間有効化」ベンチャーの商機は広がる (1/3ページ)

青砥優太郎
青砥優太郎

 デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。

 モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって働き方改革が進む中、急速にニーズが高まっている「時間有効化」です。

 テーマ概観を担当するのは青砥優太郎です。主に大手企業による新規事業の創出に携わっています。

 稲作作業は60年で17分の1に

 アグリベンチャーの支援も積極的に行っているため今回はまず、農業の時間有効化がどれだけ進んだのかについてお話します。 

 稲作農家の場合、今から60年前の1960年は、3000平方メートル(30アール)の作業を終えるのに17日という期間を要していましたが、デジタル技術の進展によって現在は、わずか1日で完了します。有効な時間を創出できるようになったことで、稲作農家の働き方も大きく変わりました。

 ジョブ型へのシフトが進む

 次に法人・個人の時間有効化をめぐる歴史を振り返ってみましょう。1970年代の高度成長期から時代に応じて働き方と法律が変わっています。現在は一億総活躍社会の提唱や働き方改革関連法に基づき、「メンバーシップ型からジョブ型」へのシフトが進んでいます。会社の拘束時間が減る中、法人側にとっては生産性の向上、個人の間では労働以外の時間の有効活用が強く求められています。

 例えばDTVSが大企業の担当者を対象に4月に実施したアンケートで「新規事業を構想する上で機会ととらえている領域は」という質問に対し、約8割が「ワークスタイルの変化」と回答しています。COVID-19によって時間の有効化に対する意識はますます強くなっていくと思われます。

 法人もさまざまな取り組みに着手しており、SlackやZoomなどスタートアップから誕生したサービスの導入が加速しています。

 年2万1000時間を削減

 難易度は高いですがバックオフィス改革という観点から大企業は、事務作業の自動化ロボット「RPA」の導入など既存事業の置き換えという領域に挑戦しています。BizteXやBOD、ウィルゲートなどRPAを提供している企業もたくさん存在し、ある地方銀行では、年間で2万1000時間に及ぶ労働時間の削減につなげました。これは正社員10人分の年間総労働時間に匹敵するもので、その時間を有効に活用すれば新規事業の創出にもつながります。

 大手企業は自社の採用プロセスを削減するため、タレントアンドアセスメントのAI(人工知能)面接サービス「SHaiN(シャイン)」を積極的に導入しています。

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