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医療×技術で2025年問題を乗り越える MedTechベンチャーが伸長 (2/2ページ)

柏修平
柏修平

 持ち運びが可能な点滴

 点滴の投与が必要な患者は病院に行く必要があり、長時間にわたって拘束されるという課題があります。個々のライフスタイルに応じた治療を実現できるようにという考えから、アットドウス(川崎市幸区)が開発したのは、持ち運べる点滴です。中核技術は電気の流れを水の流れに変える装置で、電流の制御によって投薬量を自在に調整。ポンプに与える電流を少なくすれば、微量で投薬ができます。

 重症者治療を遠隔サポート

 全国的に専門家が不足する重症患者診療の現場を、集中治療専門医と集中ケア認定看護師で構成されたチームにより、24時間・365日にわたってサポートするのがT-ICU(兵庫県芦屋市)です。病院に端末を設置することで遠隔地から電子カルテやCT画像などの医療情報を確認でき、質の高い支援体制を構築しています。すでに契約病院の数は約30に達し、今後は海外支援にも力を入れていく考えです。

 AIで痛みを客観的に評価

 脳波を測定し、AIの力で痛みを客観的に評価するシステムを開発したのがPaMeLa(大阪府吹田市)です。自己申告制の場合、個人で痛みにばらつきがあり、投薬量を誤った結果、医療事故や合併症を引き起こす可能性があるからです。システムは脳波計と同社が開発した解析ソフトで構成され、ベッドサイドに痛みレベルをリアルタイムで表示します。大学病院と治験を進めており、有効な測定結果が得られています。

 体深部のがん治療が可能に

 がんの治療法の一種に、BNCT(ホウ素中性子補足療法)があります。点滴でホウ素薬剤を注入し体外から中性子線を照射することで、がん細胞を破壊する方法です。大型の装置が必要なこともあって、あまり普及していませんが、福島SiC応用技研(福島県楢葉町)は、装置の小型化に成功しました。これによって6方向からの照射が可能になり、体表面から25センチと従来の4~5倍の深度まで対応できるようになりました。

 海外日本人向けオンライン診療

 Medifellow(東京都港区)は海外在住の日本人に向けて、オンライン診療やメンタルヘルスケアを行っています。医師でもある丹羽崇社長が学会で海外に滞在中、現地に住む日本人から「治療を説明されても理解できないので日本人医師の治療を受けたいが、どうすればよいのか」と相談されたことが起業のきっかけです。全診療科で対応できるサービスを提供しており、中国人向けのオンライン医療ツーリズムサービスも提供しています。

 団塊の世代が後期高齢者(75歳)の年齢に達し、医療や介護などの社会保障費の急増が懸念される「2025年問題」をいかに乗り切っていけるかが、医療分野の重点課題になっています。そのためにもMedTechベンチャーの台頭による新サービスの拡充に期待が集まります。

 早稲田大院理工学研究科修了(修士課程)。2006年製薬企業入社、新規標的分子・メカニズムの治験入り新薬候補の創出に従事。2013年シンクタンク入社、コンサルティング部門で大企業のヘルスケア新規事業を多数支援。2017年5月デロイトトーマツベンチャーサポート入社、MedTechを含む技術系のベンチャー創出・成長、官公庁や大企業を巻き込んだイノベーション創出を支援。

【Fromモーニングピッチ】では、ベンチャー企業の支援を中心に事業を展開するデロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)が開催するベンチャー企業のピッチイベント「Morning Pitch(モーニングピッチ)」が取り上げる注目のテーマから、日本のイノベーションに資する情報をお届けします。アーカイブはこちら

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