STARTUP STORY

福祉で「儲けてはいけない」? 知的障害の「可能性」をビジネスに昇華させる双子経営者 (1/3ページ)

TOMORUBA
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 スタートアップ起業家たちの“リアル”に迫るシリーズ企画「STARTUP STORY」。今回登場していただくのは、知的障害のあるアーティストが描くアート作品をプロダクトに落とし込む株式会社ヘラルボニー。双子のCEO・松田崇弥(たかや)氏とCOO・松田文登(ふみと)氏だ。

 知的障害のある4歳年上の兄を持つ二人は、小さい頃から兄の存在について「かわいそう」と言われる社会に違和感を感じていた。その違和感を埋めるため、知的障害のある人達の特性を活かしたアート商品を社会に発信している。これまで様々な大企業とコラボレーションを実現している注目のスタートアップだ。

 社会性はもちろんのこと、ビジネスとしても結果を残している同社。今回はお二人に「福祉」と「ビジネス」をどのように両立してきたのか話を伺った。

障害のある人が描くアートに感じたビジネスチャンス

ーーまずはお二人の起業するまでのキャリアについて教えて下さい。

松田崇弥(以下、崇弥):私は「おくりびと」などの脚本家として知られる小山薫堂さん率いるオレンジ・アンド・パートナーズで働いていました。

薫堂さんが大学で教鞭をとっていたので、ゼミに入ってそのまま就職したのです。そこで学んだことを活かして、今はヘラルボニーのクリエイティブを担っています。

松田文登(以下、文登):私は新卒でゼネコンに入社し、営業をしていました。ヘラルボニーの主力事業である「全日本仮囲いアートミュージアム」は、当時の経験から発想を得ています。当時から、ビルやマンションを建てる時に使われる白い「仮囲い」を見て、「使わないのはもったいないなぁ」と思っていました。

ちなみに工事現場には「工事成績評定」という通知表のようなものがあり、成績がよければ、次の入札で有利になるなどのメリットが受けられます。

私達の仮囲いのプロジェクトは、この成績を上げる効果もあるため、アートにはあまり縁のない現場の所長でも、興味を持ってもらえるんです。建設業界で働いていたからこその提案だと思っています。

ーー活動を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

崇弥:私が新卒2年目の時、母親が岩手の「るんびにい美術館」に連れて行ってくれたことが始まりでした。そこは知的障害のある方たちが書いたアートを展示していて、それを見た瞬間に「これはビジネスとしても価値のあるものだ」と思ったのです。

いつかは福祉の領域で起業したいと思っていた私は、副業でそれらの作品を預かってプロダクトにすることにしました。

文登:私も相談されてアート作品を見たのですが、これならビジネスとしても評価されると思えるような作品ばかりでした。貿易会社に務めている私の大学時代の友人と、アウトドアブランドでデザイナーをしている崇弥の友人との4人で、2年ほど副業で活動していました。

ーー副業でされていた活動を法人化したきっかけですが、まずは崇弥さんが勤めていた会社を辞められてへラルボニーを起業されたと伺いました。

文登:会社を辞める時も相談されたのですが、あまりに突然だったので、私はすぐには会社は辞められません。結果的に5カ月ほど遅れて、ジョインすることになりました。

ーー福祉の領域だと非営利団体で始める方も多いと思いますが、あえて株式会社にした意図はあったのですか。

崇弥:非営利にするか株式会社にするかは本当に迷いました。ただし、社会福祉法人で活動することも素晴らしいと思うのですが、どうしても国の補助金を頼りに活動しなければなりません。

それよりも、しっかり自分たちで稼いでいきたいと思いましたし、何より自分がワクワクしたので株式会社にすることを決めたのです。

文登:もともと私達は社会的な違和感を埋めるために活動していて、その中には「福祉ビジネスは儲かってはいけない」という違和感も含まれていました。株式会社で起業して利益を出すことで、「福祉もビジネスになる」というメッセージにもなればと思ったのです。

荒削りのピッチが生んだターニングポイント

ーー法人化した直後はどのような仕事をしていたのですか。

崇弥:当時は物販のブランドを立ち上げたのですが、脆弱なブランドだったのでそれだけでは食べていけませんでした。そのため福祉とは関係のないクリエイティブの仕事をもらって食いつないでいましたね。

今でこそエクイティで資金調達もしていますが、当時はそういった知識もなかったため、貯金を切り崩したり日本政策金融公庫から資金調達したりしていました。

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