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ジェンダーギャップを埋める 女性の健康問題を解くフェムテックの可能性 (1/2ページ)

東京21cクラブ
東京21cクラブ

 「Founders Night Marunouchi」は、スタートアップの第一線で活躍する経営者から学びを得ることを目的に、三菱地所が運営する起業家支援コミュニティ「東京21cクラブ」と、イベント・コミュニティ管理サービス「Peatix」との共同開催のイベントシリーズです。

 2021年7月28日に開催されたイベントで語られたテーマは「フェムテック(FemTech)」。

 「Female(女性)」と「Technology(技術)」を掛け合わせた造語で、女性特有の健康問題をはじめとする女性向けのテックプロダクトやサービスを指します。特に、ここ日本で拡大しているのは生理やPMS(月経前症候群)に関連するもの。これまであまりオープンに話されることが少なかったものの、避けては通れないさまざまな悩み・課題がある分野でもあります。

 今回は、女性向けヘルスケアアプリを開発している株式会社スルミ代表取締役CEOの石塚つばささんと株式会社三越伊勢丹MD統括部オンラインクリエーショングループデジタル事業運営部長の菅沼武さんをお呼びして、女性特有の健康問題やフェムテックについてお話いただきました。Peatix Japan取締役の藤田祐司さん、東京21cクラブ運営統括の旦部聡志がモデレーターを務めています。

 AI×フェムテックで、女性の活躍を推進する

 イベントの冒頭、各社の紹介とともに女性の健康問題に対する取り組みが語られました。

 スルミ・石塚さんはフェムテック領域の事業を手がける起業家。就活で上場企業から内定をもらった際に、人事の女性から「生理は軽いですか?」と聞かれた違和感が起業のきっかけだったといいます。

 石塚さん「女性の社会進出が進み、男性と同じように仕事をする女性が増えてきました。しかし、PMS(月経前症候群)や生理など体調面でハンデがあるのは事実でもあります。調べてみると、PMSによって88.6%もの方がストレスを感じていると言われている。また、生理とPMSの期間を合計すると、年間144日もパフォーマンスが低下することになり、年間6828億円の社会経済的負担につながっているというデータもあります。こんなに大きな課題にもかかわらず、いまだ解決策がない。女性が活躍できる社会にはこの課題解決は不可欠だと考え、起業に至りました」

 2020年8月にスルミを創業した石塚さん。当初は、出退勤時に顔の表情からうつ症状の傾向を読み取るプロダクトを開発していました。しかし、2021年3月に発表された日本のジェンダー・ギャップ指数に衝撃を受け、サービスをピボットします。

 石塚さん「日本は156カ国中120位。先進国としてあまりの低さに恥ずかしさを覚えました。女性の生理期間が長いことがマイナスにつながっていることは事実。女性が活躍できる社会をつくるには、数年以内に大きな変化を起こせなければ取り返しがつかなくなるかもしれない。すぐに、現在の女性に特化した事業へフォーカスを移しました」

 その後開発しているのが、女性向けヘルスケアアプリ「surumi care」。PMSや生理でうつ症状を抱える女性に向けて、AIによるチャットボットの会話を通して認知行動療法をうながします。

 また、アプリの機能の一つとして、生理用品の配布にも取り組もうとしています。

 石塚さん「ナプキンの購入は最低でも月1000円、生理用品全般の購入には生涯で100万~200万円かかると言われています。昔から金銭的理由などで生理用品を購入できない方はいましたが、コロナ禍でその課題がより顕在化してきました。今後、自治体やNPOと連携し、生理用品の配布支援を行っていく予定です」

 イントレプレナー制度から顧客に寄り添った新規事業へ

 三越伊勢丹・菅沼さんは、3年前からCVC・スタートアップ支援に取り組まれてきました。同社では外部の起業家と向き合うだけでなく、イントレプレナープログラムも実施。現場社員からの新規事業創出にも力を入れているといいます。

 要らなくなった洋服やバッグなどの買取・引取を行う相談窓口「i’m green」や、マンガやアニメなど日本を代表するコンテンツを三越伊勢丹とコラボして発信する「メディア芸術」、仮想空間内にある仮想伊勢丹新宿店で商品の購入体験ができるアプリ「REV WORLDS」も、そうしたプログラムから生まれたものです。

 菅沼さん「我々にとって大事なのは、三越伊勢丹のアセットを使いどのような新しい価値をお客様に提供できるか。そこにつながるのであれば、外部のベンチャー・スタートアップでも社内でも問題ではありません。『熱量の高さ』『事業の成長性』『三越伊勢丹でやる意義』を重視しながら、事業を生み出しています」

 その中で生まれた事例の一つとして、菅沼さんは家庭の事情や育児、家族の介護などがあっても、短時間で働きやすい仕事を見つけられる「ワンデイワーク」を挙げます。

 菅沼さん「ワンデイワークを立ち上げたのは40代の男性社員でした。その奥様が家庭環境の変化から働き方の不安を抱えていたそうです。発想のきっかけは身近な人が課題でしたが、三越伊勢丹はお客様も従業員も女性が多く、さまざまなライフステージにおける女性の雇用は重要なテーマでもある。そこから事業化の道筋を探り、ワンデイワークが誕生しました。テクノロジーを活用して、女性活躍の場を拡張する事業になると感じています」

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