【マック&ユニクロ流人財育成】人財教育の最大の武器、人事評価制度 (3)社員評価は日々の業務から
【マック&ユニクロ流人財育成】企業の経営者は「やる気のある人財」を求めているでしょう。会社に活力をもたらすにはやる気のある人財をいかにたくさん育てるかにつきます。
ただし、やる気だけでは会社の成長には繋がりません。
必要な知識・スキルの基準化を図り、個々の能力をその基準にまで引き上げなければ、戦力となる人財には育ちません。そこで、評価制度を実施することにより、能力の向上を見込むことができるのです。
前回はパート・アルバイトについてお話しました。
今回は社員評価についてみていきましょう。
「鬼になれ、仏になれ」を評価に取り入れたユニクロ
(1)評価のタイミング
社員評価もアルバイト同様、継続的に実施しなければなりません。
正社員の評価の場合は、半年に1回の実施が良いでしょう。1年では長すぎますし、正社員の業務の成果を見るには3カ月は短すぎます。
ただし、新規店舗のオープンや異動等、成長中の企業では業務内容の変化が多くあり、目標の修正などが必要です。
(2)項目の決め方
評価は「業績評価」と「行動評価」の両面から実施します。
業績評価では売上・利益以外にも、例えばサービス業であればQSC(品質・サービス・清掃)など、会社で力を入れていきたい項目を業績評価項目として設定しましょう。
会社全体で取り組むことに対して評価が行われなければ、モチベーションが下がります。
一方、行動評価では部下に対する育成力、お客様第一になっているかの顧客指向性、リーダーシップ、予算や目標を実現する達成力、徹底力などが挙げられます。これを評価しないと、業績さえ上げれば他はどうでも良いと考える従業員ばかりになってしまいます。
また、行動評価の中に理念の項目を設定すると良いでしょう。私がユニクロのファーストリテイリングにいた時代は、「鬼になり、仏になれ」という柳井正社長の言葉を取り入れた評価項目がありました。間違いを正し、きちんと褒めるという行動を徹底しているかというものでした。会社がどのような人財を求めているのかを理解・実行させるために理念に基づいた評価を設けることも、人財育成の手段です。
部下の様子もチェックしよう
(3)日々の業務から評価を
普段からコミュニケーションを取ることができていなければ、評価の機会を設けても面談時に本音を引き出すことはできません。
半年に1回の面談のみでいきなり指摘をしても、納得がいかないでしょう。
そのためには日々の業務の中で気になった項目を指摘し、次回その業務を行う際にフィードバックを行うということを繰り返していけば、評価面談での納得性を高めることができます。
また、被評価者に部下がいる場合は部下の仕事の様子を見ることで、被評価者が普段部下とコミュニケーションが取れているかがわかります。
コミュニケーションが良好な部下は、働いているときの表情が明るくいきいきと仕事を行います。一方、結果が出ていても表情が暗い部下がいる場合は、社内で今後離職率が上がる可能性が高く、被評価者の行動に改善の余地があり、指導が必要になります。
このように社内を見まわして見えてくる評価もあります。
(4)評価会議
半年に1回、評価会議を実施します。
ここでは1次評価者・2次評価者が集まり評価の目線合わせ、基準合わせをすることが目的です。
1次評価者が行った被評価者の評価に対して2次評価者がコメントをしていきます。
2次評価者は会社としての評価基準に則して評価のアドバイスを行い、1次評価者の評価を適正なものへと導きます。
また、1次評価者は評価判断になる材料を準備し、2次評価者を納得させるプレゼンテーションを行わなければなりません。評価会議は単なる事実や結果を報告する場ではなく、自分の下した評価に対し、2次評価者の承認を得る場でもあるのです。
評価会議では他の1次評価者も集まるため、自分以外の1次評価者の評価内容を知ることができます。自分の評価と他の1次評価者の評価の違いを認識でき、そして2次評価者はどのような視点から自分たちの評価を正しているのか。これを経験することで、評価者としての成長にもつながるのです。
究極の評価システムを持つマクドナルド
(5)フィードバック面談
フィードバック面談を行うことにより、評価結果とその理由を説明することになりますが、
一方的に話すのではなく被評価者の話を聞くことも大切です。
心掛けるべきポイントは、自己評価と最終評価との差がどれだけあり、その理由がなぜなのかを気付かせることです。
自分に不足しているのは何かを気付かせ、改善するためにはどうすればよいかを考えさせることで、成長を促します。
この際に難しいのは、被評価者の自己評価と最終評価の間に大きなギャップがあるときです。
自己評価が高く、最終結果が低い場合は要注意です。高い自己評価を行う被評価者は自信家である事が多いです。数字だけを見れば評価に値するものがあるかもしれませんが、最終結果が乖離しているということは会社としてあるべき人物像からずれているということです。
乖離を少しでも防ぐためにも、日々コミュニケーションを取るようにしていきましょう。
3回にわたり評価制度についてお伝えしてきました。
適切なやり方で評価に取り組むと評価者も被評価者も成長していきます。
その究極の形がマクドナルドだと、私は思っています。マクドナルドには全ての階層に教育と評価の仕組みがあり、それを徹底させてきました。
個々のモチベーションを上げ、スタッフと会社の成長に繋げていくための評価制度です。多くの時間を費やしますが、成長には欠かせないものです。
皆さんの会社の評価制度も今一度見直しを行い、会社の理念に即し、活躍できる人財を育成していきましょう。
【プロフィール】有本均(ありもと・ひとし)
1956年、愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部入学後、大学1年からマクドナルドでアルバイトを始め、1979年、日本マクドナルド株式会社に入社。店長、スーパーバイザー、統括マネージャーを歴任後、マクドナルドの教育責任者である「ハンバーガー大学」の学長に就任。2003年、株式会社ファーストリテイリングの柳井社長(当時)に招かれ、ユニクロの教育責任者である「ユニクロ大学」の部長に就任。その後、株式会社バーガーキング・ジャパンの代表取締役など、外食・サービス業の代表、役員を歴任する。2012年、ホスピタリティ&グローイング・ジャパンを設立。マクドナルド、ユニクロ等を経験して得た「人財育成のノウハウ」を活かし、世界中のサービス業の発展を目指す。著書に「どんな人でも一流に育つしくみ」。
【マック&ユニクロ流人財育成】は有本均さんが人を上手に育て会社を成長させる人材育成のノウハウを伝える連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。
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