【ビジネストラブル撃退道】若者よ「定時に帰るヤツ」になれ! あえてレッテルを貼られる楽な生き方
それなりのベテランオッサンになると、「ラクな生き方」が分かってくるようになる。それは「レッテルを貼られる」生き方である。レッテルと言うとネガティブなイメージがあるかもしれないが、「あの人は○○な人。だからしょうがない」と他人からの期待値を下げることが重要なのだ。(中川淳一郎)
最初はネガティブな視線を感じるかもしれないが、キチンと成果を出し続けていれば、いつしかこれが「信念のある人」という180度変わった高評価になるのである。だから、若い内から「○○な人」のレッテルを貼られようではないか。その方が人生はかなりラクになる。私が20代だった1990年代から今でもオフィスで変わらない風景が「無駄に残業をする若者」である。
かつては残業すれば残業代が出て、しかも深夜であれば25%増、みたいなおいしい思いができた。だが、今や多くの会社は「裁量労働制」だったり年俸制になっているし、ヒドい会社になると、残業をいくらしようが「○時間以上は出せぬ! ない袖は振れぬ!」と開き直ったりもする。
私は過度な残業こそ日本の労働者の精神と肉体を病ませる元凶の一つだと考えているため、「無駄な残業はやめよ」という立場である。そして、おい、21世紀になってもうすぐ20年だというのになんで「他の人よりも早く帰るのは心苦しい」という気持ちが未だに蔓延しているのだ!
従業員は「早く来る」ことについては「おっ、エラいな」程度にしか思われないことを知っている。しかし「早く帰る」ことについては、「この野郎、オレらが必死に仕事しているのにサッサと帰りやがって」と思われているのでは、と勝手に思い込んでいる。
いや、正直あなたが定時に帰ろうが帰るまいがほとんどの人は気にしていない。それなのになぜか「一番早く帰ってはマズいのでは…」と思ってしまうのである。定時が朝9時の会社だとし、9時30分に資料をクライアントに送らなくてはいけない場合など、7時に来ることもあるだろう。
その時、オフィスには誰もおらず、自分が早く来て頑張っていることは誰からも知られない。無事、9時30分に資料を送り、一つの業務を遂行したあなたは満足感に浸っている。16時を過ぎたあたりに「今日は少し早く来たからもう今は疲れているな」なんて思ったとしても、定時が18時だからまだ会社から出ることは憚られる。
そこで、どうでもいい資料作り風のことをやったり、情報収集をしているかのようなネットサーフィン(死語)をし、なんとなく「仕事してる感」を醸成させようとする。18時、ついに定時がやってきた! バイトや派遣社員が「お疲れさまでーす!」なんて言いながら平然と帰る中、あなたは帰れない。「せめて18時20分ぐらいまではいなくちゃいけないよな…」という考えがあるからだ。
結局日本の「早く帰ったら同僚に対して引け目を感じる」問題は、個々人の心の中の遠慮する心や謙虚な心がもたらすものである。それは、周囲の人々があなたに期待をしている、と思いたい気持ちから発生するものである。
だったら、この自分が勝手に抱いている期待値を下げれば、定時に帰ることなど簡単なことだ。仕事が終わっているのであれば、18時になった瞬間に元気よく「皆様、今日もありがとうございます! お先に失礼しまーす!」と言って帰ってしまうのである。いや、本当に周囲の人はあなたが定時に帰ろうが帰るまいが気にしていない。
これを1カ月もやり続ければ、いつしかあなたは「定時に帰るヤツ」という評価を下される(レッテルを貼られる)ことになるだろう。そして、その空気を感じたところで、あなたは「定時に帰ることに背徳感を感じないでいい」という本来持つべき心の安寧を得られるのだ。
そして、こうした「定時に帰る男(女)」としての立場を得た後に重要なのが、残業をしている時に「こいつが残業しているってことは、本当に必死になるしかない状況なんだな」と周囲が思ってくれることである。
つまり、本来の意味の残業を「普段は定時男(女)」であるあなたが周囲に知らしめることにより、職場全体の無駄な配慮を除去する効果が生まれるのである。ただし、「あの人は仕事ができない人」というレッテル貼りはなんとしても避けなくてはならない。そのためには、必死に成果を出し続けるしかないだろう。
とにかく、この「早く帰ったら他の人が悪く思うのでは…」という疑心暗鬼は日本から捨て去らないか? 「特にやることがないんだったらさっさと帰る」をこれからの我々は遂行しようではないか。
【プロフィール】中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
PRプランナー
1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『謝罪大国ニッポン』『バカざんまい』など多数。
【ビジネストラブル撃退道】は中川淳一郎さんが、職場の人間関係や取引先、出張時などあらゆるビジネスシーンで想定される様々なトラブルの正しい解決法を、ときにユーモアを交えながら伝授するコラムです。更新は原則第4水曜日。
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