【ビジネストラブル撃退道】通勤列車はリスクでしかない? 「電車に乗らない」が理に適っている訳
都会に住んでいる場合、ビジネストラブルを避けるにあたって重要なのは「なるべく電車に乗らない。それが無理なら乗る時間を極力短縮する」ことである。「そんなの無理に決まってるだろバカ」と言われるのは分かっているのだが、電車に乗らないことがいかに理に適っているかを説明する。となれば、通勤するには歩くか自転車に乗るか、或いは地下鉄の距離でいえば2~4駅以内に住むのが良い。1駅分だったら歩けるだろう。東京23区の賃貸の物件で予算が10万円だとする。その場合、電車に40分乗らなくてはいけない1LDKよりも15分で済むワンルームに住むべきである。
ロクなことはない
これからの人生で重要なのは小学生に言い聞かせるような話ではあるが「知らない人には話さない・知らない人との接点を減らす」(※ただし困っている人は除く)ということになるのではないだろうか。
とにかく見知らぬ人間と接してもロクなことはない。ナンパ師やらキャッチ、アンケートの勧誘、オレオレ詐欺など、結局彼らがトクするだけである。人は自分が得をしない限り、声をかけてはこない。外国のパブなどでは見知らぬ酔っ払いと「イェーイ!」なんてことにはなりがちだが、日本ではサッカーワールドカップを飲み屋のテレビで見ていて、日本代表が点を取った時や勝った時に周囲の人と肩を組み合ったりハイタッチをする程度である。渋谷スクランブル交差点のバカ騒ぎも含め、ある程度の「話しかけるだけの一体感がある場・雰囲気」がない限りは喋ることは一般的ではない。怪訝な顔をされるだけである。
また、利益がないにせよ、見知らぬ他人というものは、その行為のいちいちが腹が立つものだ。「駅のホームでいちゃいちゃするカップルはむかつく」とか「居酒屋の前でたむろしてる学生のコンパの連中は邪魔」「レジ待ちの時に前の客がカートの上と下に商品満載で相当待たされるのはウゼぇ」などと思うだろう。
そうした大前提から考えると、不特定多数と接する可能性が極端に高まる電車には乗らない、というのが重要になってくる。しかも、通勤ラッシュの時間帯は相当な割合の人々が苛立っているため、「イヤホンの音漏れ」「新聞が邪魔」「歩くのが遅い」「股を大きく開いていた」「オーデコロンのオヤジ臭」「足を踏まれた」「電車から降りる時に後ろから押された」程度でも口論のきっかけにはなるし、挙句の果てには殴り合いにもなる。傷害事件に発展して逮捕、なんてこともあり得るのだ。
「降・り・ろ!」の大コール
「エスカレーターで右側にも並び、後続の人々が歩けない」といったものについては、「エスカレーターは歩かないもの。鉄道会社もそう言ってるでしょ!」派と「とにかくどけ。急いでいるんだから右側は開けとけ」派に分かれる。前者は「だったら階段を駆け上がれよバカ」などと言うが、こうなるともうケンカまっしぐらである。
あとは、相手に非がある場合でも、注意は必要である。以前、JR京浜東北線の女性専用車両に乗る男性がガンとして降りないという騒動があった。この時の様子が動画で撮影されていたのだが、女性と男性が色々とやり合っていた後、女性が「降りて欲しいと思ってる人~!」と周囲に多数決を取るようなことを言ったら「は~い!」の声が各所から上がった。その後は女性達による「降・り・ろ!降・り・ろ!」の大コールとなった。
この動画は「ルールを守らない男性が悪い」や「女性の側もやり過ぎでどっちもどっち」といった論争がネットで発生。動画を見ると、顔がバッチリと映されている「降・り・ろ!」のコールをする女性もいる。こんな場面をネットに残され、色々といじられてはたまったものではない。文庫本を読み、静観を決め込んでいる女性もいたが、彼女を叩く人はいないだろう。だが、顔は公の場所に残ってしまうのだ。そして、YouTubeの動画では、女性の側を非難する論調のテロップがつけられる編集がされていた。
いかに満員電車を避けるか
電車のトラブルは空いている電車よりも満員電車の方が圧倒的に多い。だからこそ、7~8時台、17時~19時台、そして終電間際の電車は避けたいもの。これをいかに避けるかは、人生において意外と重要になってくる。それこそ、「電車に乗る時間を減らすためにカネをがっぽがっぽ稼ぐぜ!」ぐらいの気概を持った方がいい。また、朝の電車は時間が読めないため、乗らない方がいいという理由もある。とにかく「移動」ごときで多大なるストレスを感じるのは実に無駄なことである。
そして、もう一つ重要なことが、満員電車に乗ると、風邪やインフルエンザをうつされる恐れが格段に高まることだ。何しろ、日本人の真面目な気質のせいか、風邪をひいていても出勤してしまう。密閉された空間では避ける術はない。隣の車両に移りたくても移ることができないほど車内は大混雑、なんてこともある。
それは居酒屋やレストランでも同じだろ? と思うかもしれないが、恐らく風邪をひいてキツい人はそういった場所には来ない。あくまでも仕事だから行くのである。職場に行く手段として電車を利用しているわけだ。
ここまで言うと「会社にだって風邪やインフルエンザの人はいる」と言いたくなるだろうが、こうした場合はさすがに上司が「他の人にうつるから今日は帰ってくれ」と言うだろうし、職場で咳をしている人がいた場合は、自分のデスクとは別の場所で仕事をする、といったことも含め、逃げることは可能だ。
とにかく、見知らぬ人間と密着しなくてはならない「通勤列車」はビジネスマンにとってはリスクの塊でしかない。「無理だ!」と言うだけではなく、いかにして通勤列車との縁を浅くするかを考えるのも自身を守る術となるだろう。
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【ビジネストラブル撃退道】は中川淳一郎さんが、職場の人間関係や取引先、出張時などあらゆるビジネスシーンで想定される様々なトラブルの正しい解決法を、ときにユーモアを交えながら伝授するコラムです。更新は原則第4水曜日。
【プロフィール】中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
PRプランナー
1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『謝罪大国ニッポン』『バカざんまい』など多数。
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