【ビジネストラブル撃退道】最強はネット世論 ブラック企業やパワハラ上司から弱者を守るSNS
先日、「cakes」や「note」を運営する株式会社ピースオブケイクの加藤貞顕さんと打ち合わせをしていたところ、話題はSNSの話になり、こう言われた。この時、私は不誠実な雇い主への愚痴を話していた。
「中川さんはいざという時にツイッターで反撃できますよね。それがあるのはフリーランスとしてはデカいですよね」
確かに私はツイッターで攻撃的になることを厭わないし、いざとなれば名指ししてその当事者を批判することも躊躇しない。当然、そいつとの縁を切ることを覚悟の上での行動だが、多分、これはフリーランスに限った話ではない。組織に属するサラリーマンであっても、SNSはいざという時の武器になる。これまでに様々なフリーランスがギャラ未払いや盗用などをツイッターで告発してきた。会社員時代のパワハラを告発する女性もいたりするなど、SNSはいわゆる“立場が弱い者”を守るためのツールという面もある。
最も強いのは「世論化」
ブラック企業やパワハラ上司の対応改善を求めても変わらない場合、もっとも強いのは「世論化」である。会社に所属しており、しかも住宅ローンでも抱えているような状況ではなかなか告発はしづらいかもしれないが、ネットの特徴は以下のものがある。
大抵の場合、個人が組織に勝つ。もっというと、立場が下の者が立場が上の者に勝つ。
レスリングのパワハラ騒動、日大タックル事件、体操パワハラ騒動をはじめとした“重鎮”が居座って若手をコントロールしているような組織では上下関係を基にしたハラスメントが横行していることが明るみに出た。
芸能界にしても、SMAP解散騒動では脱退する稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾への同情の声がネットを席巻し、ジャニーズ事務所批判も盛んとなった。ファンは解散阻止に向け、新聞の個人広告をジャックするなど、3人及び他のメンバーを激励し続けた。この時、「ジャニーズ=悪」の図式がファンの間にはあったことだろうし、この一連の流れにしても、「ファンがジャニーズの理不尽な対応に声を挙げ、3人を応援した」という文脈の記事も登場した。
現在リアルタイムで進行中の「ジャニーズが稲垣・草なぎ・香取を民放TV等に出させないよう圧力をかけた疑惑で公取委が注意」という話題にしても、大組織がいたいけな個人を恫喝している構図が見える。
バッシングの対象は吉本興業へ
吉本興業所属芸人による「闇営業」にしても、当初は芸人本人へのバッシングが燃え盛ったが、宮迫博之と田村亮の悲痛な謝罪会見を経た7月22日現在、バッシングの対象は「ブラック企業」認定された所属先(と言っていいのか? 契約書はなく、あくまでも“マネジメント契約”なのだから)の吉本興業に移っている。
宮迫と田村はあの会見により「巨大組織による被害者」になることに成功したのだ。おいおい、反社勢力と交流し、カネをもらったことが問題だったはずだろ? と思う面はあるものの、吉本の隠蔽体質とブラック企業体質は、当初の一般庶民の怒りのベクトルを逸らすことに至らせた。結果、同社社長が会見を行い、処分撤回を発表。おいおい、当初の問題はどこに行った? 宮迫と田村の情に訴える会見によりガラリと世間様の“空気”を変え、組織の保身のために撤回しただけじゃねーの、としか思えない。一体「反社との付き合い」はどこへ行ったのだ!
SNSで“信用”を得ておく
まさにコレなのだ。もちろん、宮迫も田村もSNSを使ったというわけではなく、記者会見をし、マスメディアでその様子が報じられたのだが、こうした会見をする価値アリ、と思われている人間以外でも、会見に代わるのが「SNSでの発信」なのである。
世論は「判官びいき」である。だからこそ、告発者はいかに理不尽な対応を受けたのか、そして証拠は揃っていることなどを明言すれば、あとは勝手にネット世論が味方してくれるほか、マスメディアも動き始める。
こうした武器を持つことは自分の人生を守るためにも必要なことだ。だが、「SNSに業務の内容を書くことは禁止。退社した後もそれは同様である」といった誓約書を書かせられることもあるだろう
ただ、悪事をバラした場合は、その誓約書の有効性が法的にどうかはさておき、世論的には「誓約書を書かせること自体がブラックだ!」という反発に繋がる。
パワハラを含めた理不尽な扱いを回避するには、ツイッターのIDは持っておき、数百人程度のフォロワーから「この人の発信する情報は信用できる」といった評判は得ておいて損はない。
【プロフィール】中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
PRプランナー
1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『謝罪大国ニッポン』『バカざんまい』など多数。
【ビジネストラブル撃退道】は中川淳一郎さんが、職場の人間関係や取引先、出張時などあらゆるビジネスシーンで想定される様々なトラブルの正しい解決法を、ときにユーモアを交えながら伝授するコラムです。更新は原則第4水曜日。アーカイブはこちら
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