こんにちは、経営者JPの井上です。やれと言っても、なかなかこちらの言う通りにやってくれない部下に、あなたも手を焼いていないでしょうか? そもそも昨今の風潮として、一昔前のように上から「やれ」と高圧的に言うような時代でもありませんし、ともするとパワハラになるのではないかと怯え、言いたいことも言えない上司も増えています。
とは言え、部下の動きが悪いと強制や管理を強めがちなのが、上司のよく陥る罠。一方的な管理や強制で上手くいくようになるということは、残念ながらあまりありません。(それでも、分かっていてもやってしまうのが、上司の哀しい性(さが)ですが(苦笑)。)
<北風より太陽><押してもダメなら引いてみな>は今に始まったコミュニケーション術ではなく、いにしえからの知恵でもあります。そして興味深いのは、いま注目、流行りの行動経済学がこれを実証していること。今回は、逆説的に部下を動かす<使える行動経済学理論>を見てみましょう。
「イケア効果」で業務への愛着とコミットを持たせる
「ほらほら、ちゃんと毎日、営業日報の入力やってくれよ」と、いくら口を酸っぱくして言っても「はい…」と言いながら一向に入力徹底してくれない部下は、おそらくあなたの元にもいることでしょう。
上司からして、部下の商談状況の詳細や進捗はなるべくリアルタイムに知っておき、対策も練りたいのに、その情報をなかなか用意したフォーマットに落としてくれない。あいつは怠慢だ、仕事力に劣る、いい加減なやつだ…。
ダメなメンバーだと評価を確定させる前に、一つ試みて頂きたい方法があります。それは、その日報入力の習慣行動ができないメンバーに「おい、いま使っている営業日報をより分かりやすく、入力しやすいものにバージョンアップしたいんだが、更新版の日報フォーマットを作ってみてくれないかな」と、彼(彼女)自身に営業日報を作らせることです。
今回の社長を目指す法則・方程式:
「イケア効果」「ツァイガルニク効果」「サンクコスト効果」「現状維持バイアス」「保有効果」
人は他人に言われたことをやったり与えられたものを使わされるよりも、自分が考えたり企画したこと、自分で作成したものに愛着ややりがいを感じます。デューク大学で教鞭をとる心理学・行動経済学のダン・アリエリー教授は、出来上がった家具より自分で苦労して組み立てた家具には愛着が湧き、値段以上の価値を感じてしまう現象を「イケア効果」と名付けました。
上から言われたことになかなか従ってくれない部下には、「イケア効果」を狙って自分で仕事を組み立てさせることで巻き込みを狙ってみましょう。
「ツァイガルニク効果」で、もっと仕事をさせてください!
働き方改革で残業規制もこれまで以上に重要となっています。皆さんの職場でも、上司のあなたへの部下の残業管理司令は厳格なものになっているのではないでしょうか。大手企業にお勤めの読者の皆さんは部下の残業時間の多さが上司であるあなたのマイナス考課に直接反映されるように人事評価が改編されたりしている方もいらっしゃると思います。
仕事量は増え続けていて、業務時間は減らせって、会社も無茶ばかり言うよなぁ…。そうぼやいている方も多いでしょう。
ここはひとつ、これを逆手に取るメンバーマネジメント法を手にしておきませんか?
あなたのチームで、一定以上仕事に乗っている部下に対して非常に効果的な心理学アプローチがあります。
それは、まさにいま乗っている部下に対して、「おい、もうそこまででやめて、今日は帰れ」と、あえて上司のあなたのほうから先に、仕事を中断させるのです。「えー、いまいいところなので、もう一踏ん張りやってから帰ります」と部下。「ダメダメ、今月の残業時間、月初でなくなってしまうのは課としてまずいんだ。さあ、終わり終わり!帰った、帰った」。不承不承、部下はデスクを片付けオフィスを出るでしょう。
これは、自分がやりたいことを中断されると、より意欲が高まる「ツァイガルニク効果」を狙ったものです。
今回の社長を目指す法則・方程式:
「イケア効果」「ツァイガルニク効果」「サンクコスト効果」「現状維持バイアス」「保有効果」
心理学者ツァイガルニクの行った実験によれば、作業タスクを途中で中断させることで、作業を継続したチームに比べて中断させられたチームは2倍、その作業について後々鮮明に記憶していたそうです。更にこれを発展させたいくつかの実験では、同様の作業中断で、興味関心が高まることが分かったと。
私たちは日常、このツァイガルニク効果に“ヤラれて”います。それは、「続きはCMのあとで」「詳しくはWEBで」。「おいおい、続き見せてくれよ!」、と時にムッとしながらも、続きが気になってCM明けまでテレビに釘付けにされたり、スマホでサイト検索に行ったりしてしまいますよね。
ノッている仕事を強制終了させられたことで、部下はその仕事への注視度合いとコミットメントを高めます。帰宅後、翌日朝まで「続きはこうやってやろう」「関係する情報、ネットや本で調べておこう」という思考・行動が発生し、翌日出社後、猛然と昨日の続きに取りかかってくれることでしょう。
「サンクコスト効果」「保有効果」で惰性や慣れに刺激
人は、ある程度まで進めたことを途中で捨てることに心理的な抵抗を持ちます。私は漫画も良く読むのですが(現在、30タイトルほど単行本で追っています)、その中の何タイトルかは途中で話がつまらなくなってしまっているにも関わらず、「でも25巻まで読んでるしなぁ」とそのままその後の続刊を発売されては買い続け、義務のように読んでいるものがあります…。
プロジェクトワークなどが長期化してくると、悪意なくだれてきたり飽きてきたりするものです。そんな折に、上司の隠し玉として使える心理テクニックをご紹介します。
今回の社長を目指す法則・方程式:
「イケア効果」「ツァイガルニク効果」「サンクコスト効果」「現状維持バイアス」「保有効果」
ちょっと意地悪い策略ではありますが、部下のプロジェクトワークがある程度以上進んだところで、上司のあなたは「このまま予定通りのプランで進めていくのはどうかなと思うんだ。これはやめて別のやり方をするか?」。実はそのまま完成させることでOKなのですが、部下には逆のことを敢えて言って、業務を止める<妨害>に入ってみせます。
すると部下は内心、「えー、せっかくここまでやって、終わりも見えてきているのに!」。もしかしたら惰性に入っていた業務に、メラメラと火がつきます。
これは、せっかく途中まで作ったものは捨てたくない「サンクコスト効果」の現れです、しめしめ(笑)。部下にその気持ちを読み取ったら、のらりくらりと会話しながら、「そうか、分かった。キミがそこまで言うなら、このまま続けて完成させてくれ。その代わり、最高のものに仕上げてくれよ」とポンと肩を叩いて颯爽と部下のデスクから去りましょう。
更に性格悪いアプローチです。同じく、彼(彼女)が最終仕上げにかかって、いよいよ来週、事業本部の会議でプレゼンを行うというときに、「ここまでお疲れさん!最終プレゼンは先輩のAに任せるか?」。最後の最後で手柄を別のメンバーに渡すよう、取り上げてしまう(ふりをする)。
「それはないですよ!」と、はっきり言う部下もいるでしょうが、言えない部下もいらっしゃるでしょう。どちらであっても、ここまで頑張ってきた部下であれば、内心のスイッチがカチッと入ったはずです。ここまでやってきたのだから、自分がプレゼンしたい!
ここでは「現状維持バイアス」「保有効果」のスイッチが入っています。このまま自分で、という意識をグッと強め、自分で最後までやり遂げたい気持ちを高めることで、来週の事業本部会でのプレゼンに気持ちを入れてもらいましょう。上司のあなたの目的は、要するに部下に最高の状態でプロジェクトを完遂し納品してもらうことなのですから、そのためであれば、部下への多少の心理学的意地悪も許されることと思います。
人間心理の逆をついて、部下のやる気にスイッチを入れる方法をご紹介しました。
しかしこれらの心理学的アプローチは、大前提として、そもそも本人が担当業務をちゃんとやれる能力と業務を真面目にやる姿勢という土台がなければ、これらの仕掛けは全く効き目がありません。念のためご注意、ご確認ください!
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【社長を目指す方程式】は井上和幸さんがトップへとキャリアアップしていくために必要な仕事術を伝授する連載コラムです。更新は原則隔週月曜日。アーカイブはこちら