【話の肖像画】「情報製造小売業」へ、ムダ生まない情報戦略 ファストリ・柳井正氏(4)
無駄を生まない情報戦略
〈時代に合わせて、常に変化を続けている。平成29年2月には東京・有明の倉庫6階へユニクロ本部を移転し、六本木オフィスから約千人の社員が移動した〉
縦割りを改めて、小チーム制のフラットな組織による「即断、即決、即実行」で仕事が実践されるようになり、さまざまな分野で目に見える成果が出始めています。
現代は国境、産業、企業の境目がなくなり、ヒト、モノ、カネ、情報が密接につながるようになりました。ITの発達による情報革命が起こっています。ユニクロの本部を移転し、本格的に「有明プロジェクト」を始動させました。この2年間で、登山でいえば3合目ぐらいまで到達できたのではないかと思っています。
〈この「有明プロジェクト」で目指している、新たな産業という「情報製造小売業」とは〉
まず、人が物を買うときに、服もそうですけど、情報を得ますよね。新聞を読んだり、友達から聞いたり、インターネットで調べたり。まず情報から入ります。そして、どこに買いに行くかというのも情報です。だから、情報を全てつながないといけない。どういう服が売れるかという顧客ニーズを含めて情報です。自分たちも情報をいち早く取り入れ、その情報を元に商品を作っていく。作った商品を売る前に、そして売ると同時に、どういう商品を作っているかの情報もお届けしないと。
〈米巨大IT企業のグーグルと昨年夏、共同プロジェクトをスタートした〉
有明プロジェクトのひとつです。なぜグーグルと提携したかというと、彼らは世界の情報を持っています。ほとんどの人はそういうことを考えないかもしれませんが、世界の情報を持っているのなら、そこと提携をするのが一番だと考えました。世界中のビッグデータや広大な画像分析で、流行する色やシルエットもいち早く分かる。
同時に、ユニクロや低価格ブランド「ジーユー(GU)」が持っている膨大な情報も有効活用し、お客さまが欲しいと思う商品の企画や、精度の高い数値計画を効率的に行うことができると考えています。「情報製造小売業」の究極の目的は、「無駄な物をつくらない、無駄な物を運ばない、無駄な物を売らない」ということです。
〈生産管理もITを駆使している〉
ユニクロとジーユーは、販売数量の多いビジネスを展開しているため、シーズン中に追加生産による補充をしなければなりません。追加生産のタイミングの判断は、ビジネスに大きく影響します。追加生産が間に合わず、販売機会ロスを招いてしまうこともあります。有明プロジェクトの推進により、生産数量の予想精度の改善、企画から生産、あるいは生産リードタイム(発注から納品までの期間)の短縮など、物流改革が行われることで、こうした問題は解決しつつあります。これからは、AI(人工知能)やアルゴリズムなどの新しいプロジェクトがさらに加速していくと思います。(聞き手 吉村英輝)((5)は来週月曜日、9月23日に掲載します)
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