《今回の社長を目指す法則・方程式:「ビッグファイブ(特性5因子)理論」》
こんにちは、経営者JPの井上です。最近はHR Techに注目が集まっており、人事管理や組織管理、目標管理や採用管理のクラウドツールも百花繚乱。AI採用、AI社員管理などがバズワード的にニュースにもなっています。
それらのクラウドツールにも様々なアセスメントが組み込まれていたりしますが、御社では採用や社員管理で導入されている性格検査や適性検査(=性格検査+能力検査)はありますでしょうか? あるいはご自身で受けてみた性格検査、適性検査もあるかもしれません。
様々な性格検査があるなか、「パーソナリティ検査の最終回答」と言われているのが「ビッグファイブ(特性5因子)理論」です。1990年代、心理学者のルイス・R・ゴールドバーグが『パーソナリティの特性論(性格分析)』において「人間が持つさまざまな性格は5つの要素の組み合わせで構成される」としたものです。今回はこの「ビッグファイブ(特性5因子)理論」をご紹介してみます。
私たちの性格を説明する、たった5つの因子
早速ですが、ビッグファイブの5つの因子とは「Extraversion(外向性)」「Neuroticism(神経症的傾向)」「Conscientiousness(誠実性)」「Agreeableness(協調性)」「Openness(開放性)」です。誰もがこの5つの因子を持っていますが、人によってこの5つの因子の強弱が違うため人の性格や振る舞いに違いが出るというのが、ビッグファイブの学説が主張するところです。
そもそもこのビッグファイブが「パーソナリティ検査の最終回答」と言われるゆえんは、これまで存在してきた様々な性格検査が、この5つの因子のいずれかに統合されるか、関連づけられることを証明したからです。さてでは、ビッグファイブの5つの因子をご紹介しましょう。
(1)「Extraversion(外向性)」 心的エネルギーが外に向いているかを判定。
■キーワード:外向的、話し好き、明るい性格
(2)「Neuroticism(神経症的傾向)」 精神的バランスが安定しているかを判定。
■キーワード:感情の安定、くよくよしない、情緒安定
(3)「Conscientiousness(誠実性)」 プロ意識を持ち、向上心があり、努力家か。中途半端を好まず、徹底的に行動するタイプを判定。
■キーワード:徹底さ、正確さ、努力、プロ意識
(4)「Agreeableness(協調性)」 周囲と上手くチームを組んで活動できるタイプか否かを判定。
■キーワード:チームワーク、仲間意識、団体行動、協力行動
(5)「Openness(開放性)」 知的好奇心が強く、新しい事に挑戦し、経験や知識を増やしているかを判定。
■キーワード:知的好奇心、知性、新奇欲求、探究心、経験の開放
※『パーソナリティを科学する』『パーソナリティ理論を応用した5つの性格診断 ビッグファイブ プラス』等を参考に筆者作成
どうです? 私たちの性格は、要はこの5つで構成され、決まっているのです。読者の皆さんには、「なるほど」とスッと捉えられる人と、「う~ん、そうなの? 本当にこの5つだけで全部網羅されてるの?」といまひとつ腑に落ち切らない人とがいらっしゃると思います。
これも専門的な話なので概要だけ理解頂ければと思いますが、私たちが色々と目にする性格検査には「特性論」と「類型論」があります。
「類型論」は「このタイプの人は、これこれの性格です」というようなかたちで現しているパターンのもの(クレッチマーの「循環気質」「分裂気質」「粘着気質」という気質類型やユングの「外向型」「内向型」に分ける機能類型など)です。この連載で以前にご紹介した「DiSC理論」や「Social Style(ソーシャルスタイル)理論」なども類型論に当たりますね。
対して「特性論」とは性格を幾つかの構成要素に分解し、そのそれぞれの要素が量的にどの程度備わっているかという側面から性格を理解しようという考え方です。ビッグファイブは「特性論」です。因子ごとの理解なので、全体感は持ちにくいかもしれませんが、その分、因子ごとの特徴・傾向を正確に把握できます。
ビッグファイブは、全部高スコアならよい、という訳ではありません。そもそもそのような人は稀です。それぞれの因子ごとに高くても低くても、それぞれに良い側面とネガティブな側面とがあります。私たちがそれぞれ、どのような生活を送り、コミュニティに属し、また仕事をしているかにより、向き不向きや発揮すべき因子要素が異なります。大切なのは、「自分らしいスタイル」が適している場になるべく所属することです。その観点で、仕事の選択、職場選び、組織マネジメントでも活用できるものと言えます。
5因子の強弱から推し量る、部下の適切な活かし方
では上司の皆さんが、ビッグファイブをどのように使うか。部下のマネジメントという視点で、簡単にご紹介してみましょう。
「外向性」は、周囲の人たちとのかかわりや新しい出会いなどに対してどう反応するかを示しています。スコアが高い人は「楽観的で調子のいいタイプ」、低い人は「落ち着いているタイプ」。高い部下は、放っておいても自分から話しかけてきますから自由にさせてあげるのがよいでしょう。一方低い人は、自分をいじってくれるのを待っていたりします(笑)。こちらから絡んでいってあげることが良好なコミュニケーションを築くちょっとしたコツになります。
「神経症的傾向」は、プレッシャーのかかる仕事や不安になるようなトラブルなどネガティブな出来事に対してどう反応するかを示します。
スコアが高い人はネガティブな出来事に遭遇した際、動揺しやすいが傾向がありますから、上司から安全性の担保やリスク回避の具体策を提供してあげることが必要です。一方では感受性が高く、繊細な気配りができる人なので、その良さを活かした仕事を与えることが望ましいですね。
低い人は物事に動じず、冷静に判断を下すことができるので、タフな局面に頼もしい部下です。変革を擁するような仕事のリーダーとして抜擢するのが本人にとってもやりがいある仕事になります。一方では、自分に近づく危険に気づくのが遅いという側面もありますから、あまりにイケイケで進んでいるときはリスクチェックを促してあげると上司としての株があがるでしょう(笑)。
「誠実性」は、目の前で起きた出来事、定められた目標に対して、どう対応していくかを示します。
スコアが高い人は、一点集中型で目前の問題解決や目標達成に向けて誠実に取り組む性質を持っています。長期的な計画を立てて遂行することも得意で、公私共に安定感のある人として頼られる存在でしょう。こんな部下が自分の下にいたら感謝ですね。しっかりテーマを与えて取り組んでもらいましょう。
低い人は注意散漫で飽きっぽい性質を持っているので、上司としては気苦労が絶えないかもしれません…。ただし衝動的な分、さまざまなものに興味を持ち、行動力を発揮する能力も兼ね備えているとも言えますから、新規開拓や新規事業などで力を発揮してもらう場を検討するのも一考です。
「協調性」は共感能力、チームワーク力と言い換えることができます。スコアが高い人は共感能力に優れ、面倒見のいい人物として周囲から信頼されているでしょう。このタイプの部下には、部署内で折々発生する各種のプロジェクトワークで取りまとめ役の担当リーダーを務めてもらいたいですね。
一方スコアが低い人は、相手の感情に寄り添うのが苦手で、誤解を招くことも少なくありません。ただ、このタイプは同時に、理詰めで物事を判断しすばやく決断する能力を備えているので、カリスマ性のあるリーダーとなる可能性も秘めています。いわゆる一匹狼タイプ。仕事力が高いならば、大きなゴールだけ握り、あとは委譲して自由にやらせてあげることで爆発力を期待しましょう。
「開放性」は、想像力の広がり、拡散的思考、芸術的感受性を示します。このスコアが高くなればなるほど、感性を刺激する創造的なもの、抽象的なもの、芸術的なものへの関心が強くなっていきます。まだ見ぬ新しい世界に対して好奇心を持ち行動に移す。新しいものを求める探求性があるタイプですので、担当している職務の中に、なにかこうした要素が織り込まれているかどうかを確認し、業務をアサインしてください。それがないと、このタイプは仕事がつまらなくなってしまい、「転職します」となりかねませんのでご注意を。
逆にこのスコアが低ければ低いほど、安定志向で保守的な性質が表に出てきます。ルーティンを担当してもらう部下には適していると言えますが、あまりに保守的で仕事の成長が見られなかったり、業務の改善力に欠けていたりしますから、上司としては適度にチャレンジさせることも忘れないようにしましょう。
わが社が自社の事業成功のために欠かせない因子、我がチームで業務遂行に当たって優先順位の高い因子はどれとどれでしょう? ここと構成員のパーソナリティがばちっと噛み合っている組織が、活気ある強い組織です。ぜひチェックしてみてください!
ビッグファイブはサイト上で無料診断できるものも色々と公開しています(ex. 『パーソナリティ理論を応用した5つの性格診断 ビッグファイブ プラス』(http://www.sinritest.com/bigfive.html))。数分で完了し、すぐに結果が見れますので、自己理解の一つとしてぜひ受検してみてください。
改めてですが、こうした適性因子は、自分や他者を理解するためのものであり、傾向を類推するもの、それに対して望ましいと思われるコミュニケーションを図るためのものです。
自分や他者の性格タイプを把握するのに便利なツールですが、これでその人の性格や行動(または人生!)がすべて決定づけられる訳ではありません。
経験による変化や、加齢に伴う経年変化もあります。心理学の実証実験例などでよく取り上げられるエピソードで、たまたま生き別れた一卵性双生児は育てられた環境で全く異なる社会的役割を得て生活するそうです(一方では趣味嗜好、好きになる人のタイプなどは別々で育ってもかなり似通っているそうです)。
確実なデータはないそうですが、性格はおおよそ50%が遺伝的なもので、もう50%は生まれてから今まで育った環境によって形成されるそうです。
お互いが、どのような特質を持ちつつ、それをどのように活かして働いたり生活したりしていくのか。組織の上に立つ皆さんには、そんなことも頭の片隅においてマネジメントしていくことが面白いところでもあり、大切なことだと思います。
【社長を目指す方程式】は井上和幸さんがトップへとキャリアアップしていくために必要な仕事術を伝授する連載コラムです。更新は原則隔週月曜日。アーカイブはこちら