社長を目指す方程式

成功する人は実行上手で学び上手 自分を「成長上手」に仕向ける4つの方法

井上和幸

 《今回の社長を目指す法則・方程式:レイモンド・キャッテル「流動性知能・結晶性知能」、アルバート・バンデューラ「自己効力感を高める4つの方法」》

 こんにちは、経営者JPの井上です。いよいよ2020年が目前に迫りました。新年の目標、次の10年の大志を掲げようとされている上司の皆さんも多いことと思います。しかしながら、そもそも何かを学ぼう、身につけようと毎年思っていながらも、実際にはなかなか行動に移せていない人も多いのが現実。一方で、成功する社長は皆、実行上手・学び上手=「成長上手」です。いったい何が一般人と異なるのでしょう? どんな行動を取っているのでしょう? 新しい10年を迎えるにあたり、今回はそこを解明してみたいと思います。

 知能の蓄積は「流動性知能」→「結晶性知能」化で行われる

 私たちは、何かを学び、身につけ、活かすことで、自身のパフォーマンスを向上させています。イリノイ大学、ハワイ大学の教授を務めた心理学者のレイモンド・キャッテルは、私たちが身につける知能には2種類あるとしています。それは「流動性知能」と「結晶性知能」です。

 「流動性知能」とは、新しいことを学習する知能や、新しい環境に適応するための問題解決能力などのこと。対して「結晶性知能」とは、学校で受けた教育や仕事・社会生活の中で得た経験に基づいた知能を指しています。

 大掴みに理解するならば、初学のアクションで働かせるのが流動性知能であり、IQに近いものと思えば良いでしょう。計算する力そのものや論理的に考える力そのもの、あるいは記憶する力、抽象化する力自体を指します。

 一方で、蓄積・累積されていくものが結晶性知性です。例えば、言葉の分析、単語力、語学能力などや、経験から学習されるスキル、編み出される類推力や思考力などは、この結晶性知能によって行われ、養われます。

 私たちは流動性知能を日々働かせ、その蓄積によって結晶性知能は培われていくのです。よく、知能は若い頃をピークに衰えていくと言われ、ミドル、シニアになっていくにつれ「昔は計算とか早かったんだけど、最近はめっきりだめだねぇ」「昔に比べて集中力や短時間で考え尽くす力が落ちた気がするなぁ」などという人が増えてきますが、これは流動性知能のことを言っています。実際に流動性知能は25歳頃にピークを迎えると言われています。

 しかしがっかりしたり諦めたりする必要はありません。これに対して、結晶性知能は生涯をかけて蓄積・開発が可能であることが様々な心理学実験で検証されています。瞬発力は20代をピークに減衰していくとしても、何歳になっても経験や学習の蓄積で私たちは、生涯に渡って知性を高めていくことができるのです。

 「結果期待」+「効果期待」で知能蓄積のサイクルを回す

 流動性知能を適切に使い、結晶性知能を蓄積していく-。このサイクルをどんどん回せる人、回し続けることができる人こそが、成功する人の条件なのです。皆さんの周囲にも、何歳になっても好奇心旺盛で情報感度の高い人、新しい場所や人との出逢いにどんどん出向いていく人がいらっしゃるでしょう。あるいは読書家、映画や芸術、教養関連の情報を貪欲に求めインプットされていらっしゃる人。こうした人たちは生涯、結晶性知性を高め続ける人たちです。

 ではなぜ成功している経営者の方々に、こうした結晶性知性を高めることが得意で身についている人が多いのでしょう? それは彼らが、「結果期待」=「こうすればうまくいく」というイメージを持っていて、かつ「効果期待」=自分はその行動を常に取ることができると思えるマインドセットを身につけているからなのです。

 例えばダイエットについて、「週に2~3回、1時間程度の有酸素・無酸素運動をして、食事を毎日2000キロカロリー以内に抑えれば、数カ月内に適正体重に戻すことができる」という「結果期待」を知っていて、これを自分はいざとなったら実行することができるという「効果期待」を持っていれば、その人はいつでもダイエットに成功することができるという訳です。

 このダイエットの例でピンとくると思いますが、行動をしっかり行い成果を得るためには「結果期待」だけではだめで、「効果期待」を持てることにこそ鍵があるのです。心理学者のアルバート・バンデューラは、望ましい行動を取るためには「効果期待」こそが大事だということを突き止め、それを「自己効力感」と名付けました。仕事の成功には自己効力感が大きく影響することがわかっているのです。

 自己効力感を高める4つの方法

 バンデューラは、自己効力感を高めるには下記4つの方法があるとしています。

  • 成功体験(努力の上での直接的な成功体験)を与える
  • モデリング(代理経験=間接的な成功体験)を与える
  • 説得する
  • 生理的・感情的状態をよくする(生理的高揚や肯定的な気分)

 成功体験を得るには、安易な褒めや容易なレベルの達成ではだめです。大した努力もせずに褒められても、自己効力感は高まりません。忍耐強い努力によって障害に打ち勝つ経験が必要です。上司が部下に対してという観点では、多少困難な課題を与えつつ、サポートしながらなんとか成功に導く、といった仕組み・取り組みが必要です。

 モデリングは、先人の成功例をみるとか、理想のイメージとなる上司・先輩・メンターを持つなどで疑似体験=シミュレーションをすること。

 説得とは、「自分はやればできる!」という自己説得(自己暗示)。上司なら部下に「君ならできる」という期待の言い聞かせを行うことですね。

 生理的・感情的状態をよくすることは、ベースのコンディション作りとして非常に重要です。健康的な精神状態であれば、物事に積極的に取り組めますし、逆に落ち込んでいたりネガティブな感情状況ではパフォーマンスはガクンと落ちることはいうまでもないでしょう。

 仕事のできる人、成功している経営者などを見れば、この4つについて総出動できる人であることが分かると思います。あなたは幾つ、実行できていますか?

 成長、成功する人は、「やれるだろう、やりたい!」→実行→「やれた!」のサイクルをどんどん回しながらスパイラルアップしていく人です。あなたも2020年、この成功サイクルに入り、日々回し続け、これからの10年、大きく成長し活躍し続けましょう!

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井上和幸(いのうえ・かずゆき) 株式会社経営者JP代表取締役社長・CEO
1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。
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【社長を目指す方程式】は井上和幸さんがトップへとキャリアアップしていくために必要な仕事術を伝授する連載コラムです。更新は原則隔週月曜日。アーカイブはこちら