第28回 新規ビジネスは素早いPDCAが鍵
化粧品のオルビスは、期間限定でチャット接客サービスを導入しました。サイバーエージェントの子会社AI Shiftが提供するチャットシステム「AI Messenger」で、対面のようなきめ細かいサービスを目指すということです。AIロボットの対応だけでなく、同社の美容部員が、自宅にいる顧客に対応するサービスに挑戦するということです。
この数年で一気に伸びてきた中国人のバイヤーによる「ライブコマース」はそもそも遠隔接客そのものです。ライブ動画とECを組み合わせた仕組みはインタラクティブ性があり、既存のテレビショッピングとは異なります。そして、コロナ下の日本においても、店舗の休業が続いたことで新たな遠隔接客の形が普及しつつあります。
解除後もすぐには客足が戻らないと想定するアパレルや化粧品業界では、ライブコマースのように、各営業マンがSNSなどを通じて商品・コーディネートを提案、そのまま購入できる「STAFF START」というシステムの導入が急速に進み始めています。
「馬鹿げたアイデア」が「ふつう」に
この写真はロックダウン(都市封鎖)が解除されたドイツのカフェでソーシャルディスタンス(社会的距離)を確保するための帽子をかぶっている客の様子です。
「馬鹿げたアイデアだ」という評価が多かったのですが、インターネットが出現したときも、スマホが出てきた時も同じように「馬鹿げたアイデア」は多くありました。SNSが出てきた時に「なぜ友人の日記なんて読む?」という話もありましたし、YouTubeが出てきた時に「なんで素人の動画を見たいの?」という反応がほとんどでした。
新しいルールやツールが生まれた世界では、どのようなニーズがあるのか、それに対しどのような問題解決の手法が有効かは誰にもわかりません。しかし現在大きな存在感を持っている企業・サービスも最初は小さくスタートしたものであったのです。
いよいよ世界中で規制が緩和され始めました。感染を防ぎつつ、移動と経済活動を再開させようという流れです。
「感染を防ぎつつ」生活する様式を「ニューノーマル(new normal)」などと呼んでいます。新たな行動様式としてマスク着用などを要請するものですが、これは簡単なものではありません。
- ・テーブルの間隔を2メートル以上空けましょう
- ・対面での会話は避けましょう
飲食店にとっては「無茶言うな」という感じです。これは休業要請と同じくらい死活問題となるものです。定員の半分しか入れられないコンサート会場や電車・飛行機などでどうやって採算が取れるのでしょうか。ここには大きな解決すべき問題、つまりビジネスチャンスがあります。
日本企業はまた出遅れるのか
これは、旅客機の内装や座席を手掛けるイタリアのAviointeriors(アビオインテリアズ)が、エコノミークラスで感染を防ぐ形として提案したものです。「なんだかな~」と流してしまうか、「さらに良いアイデアはないか?」と動くか、どちらでしょうか?
生きる上で、もっと小さな世界で考えてもビジネスをする上での「最低限のルール」が変わったのです。世界が同時に「不便」であり「不愉快」な状態になります。新しいルールに則って解決すべき問題が山ほど現れたのです。
ここには大きなビジネスの余白が現れたといってもよいでしょう。これまで何度かあった大きな変化の際に、新しい分野をうまく獲得した日本企業はほとんどありません。
- 感染を防ぎつつも、これまでのように3密空間を楽しめるアイデアは?
すでに世界では大小様々なアイデアが芽を出してきています。私たちは、インターネットが生まれた時のように、どこかの国が作った商品の後追いになるのでしょうか。車のような工業製品の時は、後からであっても洗練させればナンバーワンになれたかもしれません。しかし、今回のコロナ禍もインターネットの時のように出遅れたらあとはプラットフォーマーに利用料金を支払うだけということにならないでしょうか?
前例のないピンチではPDCAしかない
「完璧な商品を出す」という意気込みは捨てなくてはいけません。
コロナ以前と同じ快適さを実現する新商品を出さなくてはいけないと考えてはいけません。
たとえば学習塾業界では「オンライン授業」と聞くと、「対面授業の良さ」を挙げて拒否し続けた先生たちがいました。また、現状でも「やっぱり対面にはオンラインにはない利点がある」と言う方も多いですが、「オンラインには対面では解消的ない問題を解決する力がある」のも現実です。以前の良さが失われていたとしても、まずはローンチさせる瞬発力こそが、経験を積んで先行者としての力となっていくのです。先行して取り組んで、試行錯誤(PDCA)し始めた企業だけが、対面授業を凌ぐオンライン授業を実現するのです。
Amazon(アマゾン)が出てきた時に、「本は本屋で手に取って選ぶものだ」という拒否反応が出版社・書店側に大きかったのを覚えています。品揃えも今ほどではなかったAmazonですが、先行者として多くの経験を積み重ねていくことで替えの効かない存在感を持っています。
すでにコンテスト形式で「アフターコロナ」のビジネスアイデアを集めている海外の企業も現れています。個人や中小企業のアイデアなど「外部」を使うことが苦手な日本の大企業病も顔を出しています。数年後に「2020年の大ピンチは実は大チャンスだった」ということにならないように、トライアンドエラーに素早く挑戦する時です。
試しにやってみる。だめなら次を考える。前例のない状況では、これしかないのです。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら