社長を目指す方程式

「3つの力」が鍵 これから差がつくテレワーク上手な上司、下手な上司

井上和幸

 《今回の社長を目指す法則・方程式:片桐あい「テレワーク3.0」》

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言の全面解除から1カ月半。東京では皮肉にも解除後に感染増加が続く中で、この状態が当たり前の「ウィズコロナ」下での<通常営業>が始まっています。

 緊急事態宣言下では様々な急場凌ぎの対応が行われ、慣れない在宅ワークやオンラインでの会議、商談、あるいは電子上のみでの承認決裁なども、多少の不手際があったり、苦手で自分が手を出すことから逃げていても、「まあ、仕方ないよな」とある面、エクスキューズもできました。

 そして待ちに待った緊急事態宣言解除後、街には人がどっと溢れ、コロナ以前のような通勤スタイルに戻れるかと思いきや、「あれ、これは元に戻らないの?」と、戸惑っている上司の方々も少なくない模様。その最たるものが、テレワークの継続です。

 ウィズ/アフターコロナは「テレワーク3.0」

 ニューノーマル(新常態)~「コロナ以後」の新しい働き方は、オンラインでできることは全てオンライン上で行うテレワークスタイルに等しいと言って、ほぼほぼ過言ではないでしょう。3密を回避するベストチョイスであることは論を俟たず、その上でテレワークがもたらしたメリット(通勤時間の劇的削減、必ずしも必要ではなかった対面での会議・商談に伴う移動などのコスト削減、会食経費の削減、オフィス稼働費用の削減、オフィススペース自体の削減、休憩時間の有効活用、自己管理ができる前提ではワークライフバランスの充実、など)に経験者は皆、気が付いてしまいましたから。

 人材育成コンサルタント、産業カウンセラーの片桐あいさんは近著『これからのテレワーク-新しい時代の働き方の教科書』(自由国民社)の中で、今回の新型コロナの影響でテレワークに入った今を「テレワーク3.0」と呼び、今回のテレワークがうまくいくために必要な「3つの力」を「セルフマネジメント力」「マルチコミュニケーション力」「成果の見せる化力」だとしています(ちなみに1990年代、外資系企業などがメールや電話を使って実施していたのが「テレワーク1.0」。インターネットが普及し、フリーランスの拡大などと共に新型コロナ以前までに実施されていたのが「テレワーク2.0」とされています)。

 テレワークの「天国と地獄」

 テレワークを一定期間以上継続すると、自分自身でも問わざるを得ないのが「セルフマネジメント力」ではないでしょうか。もしかしたらオフィスにいたときも、気がつくとYouTubeを見ていたり、スマホチェックに余念がなかったりしたかもしれません(苦笑)。それでもオフィスワークをしていると周囲の目や上司・同僚のチェックが入らざるを得ないので、一定の行動規制や業務への取り組み管理がされていたことでしょう。

 これが一切なくなってしまうことは、テレワークを開始した当初はパラダイスに思えるかもしれませんが、ある一定期間を過ぎれば、自分自身への不安や自己嫌悪へと激変します。「ああ、こんなことでは仕事の成果が上がるはずがない」「こんなだらけた自分では、ダメな人間、仕事のできない人間になってしまう」…。業務に邁進できている人はこのような感情に陥ることはありませんが、自己管理ができなくなっている人はこうした自分への負の感情を抱かざるを得ないのがテレワークの怖いところです。片桐さんは、このようなことにならないために、以下8つのポイントを挙げています。

・「負の感情」を「快の感情」に変える(やりたくない仕事を、楽しい・自分に意味のある仕事に変える努力をする)

・「自分のありたい姿」を常に持つ

・自分自身の状況、仕事の環境、プライベートの環境を正しく冷静に把握する

・自分の身体、心、頭の状態管理をする

・休み時間を有効活用する(気分転換)

・ルーティンを作る(仕事のスイッチ)

・仕事の「チェックポイント」を設ける(自分、部下、それぞれのマイルストーンを決めて合意しておく)

・時には「強制終了」する

 <時には「強制終了」する>、分かりますね~。私の周囲でも、テレワークになって逆に残業が増えた、やり過ぎてしまう、という声も多く聞きます。私の知人友人にはワーカホリックが多過ぎるのかも知れません(笑)。読者の上司各位もそうかもしれません。しかし、制限がない分、逆に「キリがなく」働いてしまうという側面も確かにあると思います。自分なりのペース配分で良いと思いますが(その自由度が上がるのがテレワークの良いところだと思います)、勤務開始、休憩時間、終業時間をしっかり決めて毎日の仕事に臨む必要がありますね。部下に対しても、このスケジュールをしっかり決めさせてあげるという行動管理は大事ではないでしょうか。

 縦横無尽にコミュニケーション手段を使い分ける

 ビフォーコロナから私たちは、対面、電話、メール、SNSなどをTPOに合わせて使い分けコミュニケーションを行っていました。リモートワークになり、ここに大きく食い込んできたのがZoomなどのビデオ会議です。またこれまで以上にSNSの活用頻度が上がったり、Slackなどのコミュニケーションプラットフォームを導入されたりした企業も多くあると思います。

 片桐さんが第2の力に挙げる「マルチコミュニケーション力」は、<性善説で、メール、電話、ビデオ会議、チャット。1on1、1対n、n対nのコミュニケーションを使い分ける(重ねて使う)>力を指しています。これを機能させるためには、性善説、お互い様の心で、コミュニケーション密度を上げ、信頼関係を築くことだとおっしゃっています。

 テレワークでは、お互いが自宅の風景などプライベートに踏み込む姿を(図らずも)共有する(してしまう)ことも少なくなく、時にお子さんやパートナーの乱入があったりします(笑)。こうしたことに寛容になって受け入れ合うことも大事であり、また、密なコミュニケーションを図るためにマルチなツールと形式を駆使すべきではありますが、一方ではプライベートに踏み込まない礼節も、テレワークをお互い健康的に継続するためには、非常に大事なことですね。

 お互いがアクティブに働いている状況の共有=安心感、信頼感

 さて、第3の力である「成果の見せる化力」。上司の皆さんがテレワークになって最も悩まれているのが、「部下のマネジメントがしにくい」「部下の働く姿が見えず不安」ということです。ご自身の働く姿を上役、社長に見せにくいことにもお悩みかも知れません。

 本来、テレワークであろうがなかろうが、部下の働く姿(動作)を常時監視・管理しようという発想自体が間違っていると思うのですが、成果主義的働き方、「ジョブ型」雇用への移行議論はひとまずここでは棚上げしておいて、上司と部下の間で、あるいは同僚間で、<いかにお互いの働く姿、気配を共有しておくか>という方向での解決策を考えてみましょう。

 片桐さんがお薦めするのが、<「常時オンライン風」の自分を作りコミュニケーションのキャッチボールをする>ことです。私自身も当社でメンバーたちと業務をしていてそうなのですが、オンラインミーティング以外はほぼほぼメールでの業務やり取りなのですけれども、お互いがそれぞれ並行して走っている各プロジェクトに対して、常時キャッチボールでのやり取りができている限り、「あれ、働いているのかな?」などと思うことは一切ありません。

 別に常に即レスでなくとも、数十分、あるいは数時間の間でお互いの返信が自然と行われており、また業務については私を含めて全社員のカレンダーが共有されていて予定が書き込まれていますので、誰が今何をしているのか、概ね把握できています。ちょっと自慢ですが(笑)、経営者JPではもともと全社員が「成果の見せる化力」を身につけていたので、スムーズにフルリモートワークにスイッチできたのだと感謝しています。

 いかがでしょう? テレワークを健康的に継続するには、ご紹介した中で特に、ルーティン力、気分スイッチング力、強制終了力あたりが大事だなと実感しています。読者の皆さまもぜひ、息切れしないよう注意しつつ、「3つの力」を活かしてニューノーマル(新常態)なテレワーク上手上司となって頂ければと思います。

▼“社長を目指す方程式”さらに詳しい答えはこちらから

井上和幸(いのうえ・かずゆき) 株式会社経営者JP代表取締役社長・CEO
1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。
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【社長を目指す方程式】は井上和幸さんがトップへとキャリアアップしていくために必要な仕事術を伝授する連載コラムです。更新は原則隔週月曜日。アーカイブはこちら