元受付嬢CEOの視線

自分の会社のトップを信用しているか 「辞めたい」ときの3つのチェックポイント

橋本真里子

 新年度が始まり、2カ月が経とうとしています。「5月病」という言葉を耳にするこの季節。年度初めである4月は、慣れない環境で少しテンションが高い日々が続きます。1カ月ほど経つと、知らず知らずの間に溜まった疲れが出てきたり、思っていた現実とのギャップに気づいたり…と、少しネガティブなマインドになる人が出てくるのではないでしょうか。

 私は小学生の頃、よく5月に発熱し、学校を休んだ記憶があります。環境の変化で疲れが出るんだな…とその頃から感じていました。もしかすると、その経験が前回おすすめした「新しい職場でもしんどくならないコミュニケーション」にもつながっているかもしれません。

 今回はそうした疲れの出やすい時期、ネガティブ思考に陥りやすい時期だからこそ、あえて「仕事を辞めたいと思ったときに思い起こしてほしいこと」を3つお伝えします。

 新卒の方や4月に転職をした方の中には、理想と現実のギャップに戸惑い、この5月に「もう辞めたい…」と考えている人がいると思います。そんな方に、そして経営者にもぜひお伝えしたいことです。「従業員に、どんなことを大切にしながら働いて欲しいか」「従業員に、どんなことを念頭に転職を考えて欲しいか」という指針になる内容だと思うからです。

 私が今からお伝えすることは、とある経営者の方からお聞きした話をもとにしており、それは私自身が経営者として気づかされること・学ぶことが多いものでした。従業員の立場で、というより、経営者だからこそ知っておきたい・忘れてはいけない内容だと思うのです。では、先輩経営者のお話を自分なりに解釈して、自分の言葉でしたためてみたいと思います。

自分の仕事に誇りを持てるか

  • 自分の仕事に誇りを持てているか。

 いきなり難しいテーマかもしれません。まだ就職したばかり、転職したばかりでそこまでの誇りを持てる人のほうが少ないかもしれません。そこで私が大事だと思うのは「誇りを見つけよう・持とうと思えるかどうか」です。

 新しい職場ですぐに「この仕事に誇りを持っています」と言えるほうが不自然かもしれません。だからこそ、いますぐに誇りを持てとは思っていません。

 しかし、誇りは勝手に見つかるものではなく、自らの仕事に魅力を見出し、自分で作っていくものです。他人と比較するものでもなければ、他人からどうこう言われるものでもないと思うのです。まだ探っている段階であっても、「この仕事に興味をもち、誇りを見つけ、自分の天職と言えるような気持ちで業務に向き合えているか」が今の段階では重要な気がします。

 もし悩まれている人がいたら、ちょっと立ち止まって考えてみて欲しいポイントです。

今の仕事に面白さを見出す努力をしようと思えるか

  • 仕事が楽しい。面白い。

 そんなことはきれい事だと思っている人、実は結構多いと思っています。

 でも、仕事が楽しくないということは、人生の3分の1は楽しく過ごせていないわけですから、仕事を面白くすることを簡単に諦めることはいいことではないと思います。

  • 仕事が面白いと思えない。

 これは誰しも一度は持ったことがある感情かもしれません。私もあります。過去の受付の現場です。そこは短期で辞めました。ただ、単純に面白くなかったからやめたわけではありません。ここで自分がどんなに努力しても、面白くすることは無理だと思ったからです。

 皆さんがもし「面白くない」と思ったとしても、面白くする努力をする必要はあると思います。努力することで面白さを発見できるかもしれません。面白さを発見する努力は、どんな職場に行ったとしても必要なものだと思います。

  • 面白さを見出すことができなかった。
  • 面白さを感じていたが、成長や思考の変化とともに面白さを感じるポイントが変化した。
 

 こういった場合は、転職を考えるいいタイミングだと思います。一度しかない人生、1分でも多く楽しい時間を過ごして欲しいと私は思います。

自分の会社のトップを信じることができるか

  • 従業員が、自分が勤める会社の経営者を信用できなくなる。

 これは私自身、経営者として日々考えさせられる内容です。先輩経営者からこのお話を聞いた時に、改めて背筋が伸びる思いをしたことを今でも覚えています。

 経営者というのは、信用が何より大切で、信用によって、提供するサービスのユーザーや株主の方、そして従業員のみんなに支えられていると日々感じています。だからこそ、真っ当に生きていくこと、嘘をつかないこと、日々の感謝を忘れないと常々思っています。ただ、自分は決して完璧ではありません。そのため、このお話を聞いて、「トップとして信じてもらえること」は何よりも目指し続けなければいけないことなんだと再確認しました。

 これを読んでいただいている方が経営者の方であれば、この言葉を共有したいと思いましたし、従業員の方であれば、今後のキャリア人生を歩む上で、一つの考え方として持っておくことをお勧めしたいと思いました。

 もう一つ、従業員の立場の方々に重要なことをお伝えしておくと、「信用=好き・嫌い」ではありません。会社の中で経営者に対してあなたが見えていることは意外と一部であることを忘れないでください。経営者はあなたが考えてもみないことを考えていたり、対応していたりします。また、あなたがしたことを意外と見ているのも事実です。

 それらが理解できるのであれば、「今の会社で働き続ける」という選択肢は有効だと思います。そう思えないのであれば、次の道に進むことも選択肢の一つかもしれません。

仕事で悩んだときのチェックポイントに

  • 自分の仕事に誇りを持てるか
  • 今の仕事に面白さを見出す努力をしようと思えるか
  • 自分の会社のトップを信じることができるか

 冒頭でも触れましたが、これらは私がとある経営者の方に聞き、感銘を受けたお話をもとにお伝えしたことです。経営者としてこのお話を聞けたことは非常に幸運だと思いました。

 このお話は、部下を抱えるマネージメント職の方にも通じるお話だと思います。そして、私が受付嬢だった時のことを思い出してみても、従業員の立場でこういった視点を持ちながら仕事に就くことは、非常に有意義だと思います。

 会社は社会の一部である。働くことは社会に貢献することである。これは立場に関わらず言えることです。きっと私もこの先迷うことや悩むことがあるでしょう。そのたびにこのお話に支えられるだと思います。

橋本真里子(はしもと・まりこ) 株式会社RECEPTIONIST 代表取締役CEO
大学卒業後、IT企業を中心に上場企業などで受付業務に従事。受付嬢として11年間、のべ120万人以上を接客。2016年にRECEPTIONISTを設立し、翌年にクラウド受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。日程調整ツール「調整アポ」、会議室管理サービス「RECEPTIONIST For Space」ともに、コミュニケーションをワンストップで効率化する世界を目指し、年間利用回数は120万回超。

【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。アーカイブはこちら