ローカリゼーションマップ

共通点探しではなく、差異点を受け入れよう 明るい「違いが分かる人」を目指す

安西洋之

 「できるだけ多くの点を見つけていけば、いつの日かそれらが自ずと繋がってくるものだ。その時、『分かった!』という確信が生まれる」ということをたくさんの人が語る。長い間、ぼくも繰り返しそう話してきた。もちろん、今も考えは変わらない。 

 殊に一つの専門分野-あるいは担当分野-だけで分かることはたかが知れており、複数の分野を大局的に眺めないと全体の姿が分かるはずがない。全体の姿が分からないと、目の前にあるディテールの意味も分かるはずがない。

 「横断的」という言葉がキーワードになり、分野を超えた人のネットワークをもつ大切さが強調される。チームでさまざまなアングルから眺めると見える景色は格段に色彩豊かになる。

 ある一つのエピソードから色々なことを発想し、「こういうことは、あのシーンにも適用できるよね」という会話に花が咲く。「そう、そう、それなら、これも使えるよ」とアイデアはどんどんと広がる。

 そういう発言をする人が「気の利いた人」と見られたりする。「アイデアマン」とも呼ばれる。または、平和主義であるとも…。

 ここまで読んできた方は、薄々感じ取ったと思うが、ぼくは今まで極めて肯定的に捉えられてきたタイプ、または傾向を再考すべきタイミングではないかと最近になって思い始めている。

 何を考え始めているか、もう少し書いていこう。

 離れた複数の点を繋げるのは、実はそう難しいことではない。言うまでもなく、物理的に離れている複数の点ではない。

 例えば、複数の点にある共通要素を見いだして繋ぐことを言っているのだが、割と似た要素を共通点に仕立て上げるのは比較的容易い。

 したがって「これで、点と点が繋がったじゃない!」と喜ぼうと思えば、喜べるものなのだ。しかしながら、最近、意味もなくただ繋げるためだけに共通事項を確認し合っている場面に遭遇するにつけ、これで良いのだろうかと疑問を抱き始めたのである。

 というのも、「共通だと思っていたら、全然、そうじゃなかった」「共通だからお互いがフラットだと思っていたら、意識や目的に差があり過ぎ、両者が繋がる意味はないと思った」という事態の急転をみて、そもそも論に戻ってきたのだ。

 そもそも、点と点のつながりにそんなに夢中になって何になる?と。 

 点と点がなるべく多く繋がると、全体像の輪郭がはっきりとしてくるような気はする。それは確かなのだが、その輪郭が実像に近いのか?という自問は必要ではなかろうか。

 どうしてもつながった事実を成果として固執し、ほんとうは繋がるに値していないと判断するのが怖い、というのもあるだろう。

 だから、共通点探しではなく、差異点の受け入れ方をもっと考えるべきではないか。

 「お互いの違いを認め合う」のは多様性ある社会の基本である。だが、そう簡単なことではない。

 どうしても、前述したように「お互い似ている」と見なした方が、とりあえずは圧倒的に楽なのだ。チームで最初の一歩を踏み出すにも、類似点の確認が手法として実践的だ。

 しかし、後のプロセスになって、この安易さが足をひっぱる。

 したがって共通要素を出発点にするのではなく、違いを出発点にするアプローチの必要性をつくづく思うのである。最初に違いを認め合い、それを受け入れ合えてこそ、次のステップで出逢う共通要素の背景も明確に理解できるだろう。

 更にいえば、コンテクストに依存しない要素、コンテクストに依存する要素、両方ある。前者のはずなのに、実は後者であったと後になって分かるのがトラブルの元である。しかも、後者を共通要素と見なしていた時に傷は深い。

 繰り返すが、ここで書いている転換は精神的にもややしんどいはずだ。辛口の懐疑主義と言われるかもしれない。視野が狭くなったとも第三者の目には映る。

 だからこそ、明るい「違いが分かる人」を目指さねばなるまい。

安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?:世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。