みなさんの周りでの「リモートワーク」の評価はいかがですか?
私の運営する学習教室ではズームで参加している小学生が国内外にいて、やはりデジタルネイティブ世代である彼らは楽に感じているようですが、サラリーマン世代は年齢が上がるほど芳しくないのが現状ではないでしょうか。「ズームでの会議は疲れる」という声は時々聞こえてきます。私たちの教室でも講師陣のほうが対応に時間がかかりました。
今日のテーマは「原状回復の欲求」です。例として「リモート営業やリモートミーティングによって、それまでには起きていなかった問題が起こった!」という状況を考えます。
「原状回復の欲求」とは
例えば、リモート営業の問題として挙げられるのは、
- 顧客の気持ちが読めない
- チームワークが乱れた
- 細かい情報に気が回らない
などです。このような場合に、「やっぱり元の状態が良いのではないか?」と飛びついてしまうことを「原状回復の欲求」と言います。「元の状態に戻す」ことがそんなに難しいことではなかったりすると尚更この傾向は強くなります。みなさんも「やはり対面を増やすべきだ」とか「できる限り出社する方向へ」という流れが発生した職場の話は耳にするのではないでしょうか。
「戻す」という選択肢は、
- 一番簡単に思いつきやすい
- 「即座に」目の前の問題を消滅させることができる
これらが反射的に飛びついてしまう理由です。新たに発生した問題に大きなストレスを感じると、とにかくそれらから簡単に逃れる方法をとってしまうのです。
安易に「戻す」と、原状回復どころか悪化する?
この「原状回復の欲求」には注意が必要です。新しい問題をとりあえず消滅させることにより、もともと存在していた問題が見えなくなりがちだということです。
「オンライン会議は問題だから元に戻す」ということで、
- 顧客の気持ちが読めない
- チームワークが乱れた
- 細かい情報に気が回らない
は消滅するかもしれませんが、そもそも存在していた
- 密を避けてコロナ感染リスクを減らす
や、
- 移動コスト
- 遠くに住んでいる人材の有効活用
などは解決していないわけです。しかし、新たに発生したほうの問題を解決したい、つまり「原状回復をしたい」という欲求のほうが強いため、これらの問題が存在する元の状態に戻っただけにも関わらず、「問題が解決した」と考えてしまうのです。
残っている問題を解決できないにも関わらず、「問題は解決した」ような雰囲気が生じ、元からの問題は小さなものとして「そのまま放置」だったり「気合で乗り切る」こととしがちです。作業量の増加によって同じ結果を生み出すことになり、生産性も低下してしまいます。
置き換えてみるとこれは、下記のような感じで、状況がちょっとずつ悪化していくようなものです。
「赤字100万円の状況で、新たな手を打った時に赤字が200万円になってしまった! 大変だ!」
↓
「とにかく元に戻そう!」
↓
「赤字100万円の状況に戻った」
↓
「一安心。まあ100万円の赤字ならこのままみんなで頑張ろうか」
ですから、安易に「原状回復のために元に戻そう」というだけでなく、落ち着いて「改善」や「他の策」を検討する視野の広さも大切なのです。
「オンライン疲れ」を物ともしないスタートアップ2社
広まるかどうかは未知数ですが、「オンラインはやっぱり…」というムードの中で面白い取り組みをしているなと感じたスタートアップを2つ紹介します。
▼デスクを離れたっていいじゃないか! 散歩しながら会議に参加
私はほぼ毎日オンライン会議があるのですが、ブレストをしたいという場合に画面で顔を見ている状態だとうまく頭が回らないなという感触がありました。うろうろ歩いてみたりしたいなと思っていて、散歩しながらiPhoneで会議に出席してみる工夫をしてみることも。
そんな中で、私と同じような思いでローンチされていたのが「Spot(スポット)」というサービスです。歩きながらの会議を実現するプラットフォームで、サービスのトップ画面に”try a walking meeting with Spot”(Spotでウォーキングミーティングを試しませんか?)という文字を見た時には心が躍りました。
このアプリは、会議参加中も、参加者の顔を映し出すことはあえてしません。また、スケジュール登録のほか、会議内容の録音や文字起こしもしてくれます。アルゴリズムによって人の話し声と認識した周波数の音を増幅し、周囲の騒音など“その他の音”を抑える機能もあります。私は特に、会議中もワンタッチで「個人用メモ」と「自動共有メモ」が出せて記入できるところが便利だと思います。
Spotは決して画期的ではないけれど、かゆいところに手を届けようという心意気が伝わってくるものでした。
▼コロナ禍の中で…現地コンダクターが視察先を動画中継
また、「オンライン商談は厳しいな」「やはり出張して対面してこその商談だ」という評価が増えてきているなかで出てきたのが、海外出張代行サービスの「TRAVEL MEET(トラベルミート)」 です。「『現地に行けない』を解決します」というコピーで、出張したい先に住んでいるツアーコンダクターが動画中継しながら展示会や商談会、現地視察などに代行参加してくれます。
ストレスや焦りの中で「非効率な選択」をするクセを理解しよう
私たちはストレスの高い状況になるほど、反射的に「効率の悪い」選択肢に飛びついてしまう可能性があります。「以前は良かった」と考えてしまいがちな「心のクセ」を理解して、モレなく、ダブりのない選択肢を洗い出す力を身に付けて欲しいと思います。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら