「それからいろいろな仕事をしながら10年近く暮らしましたが、大変だったのは査証(ビザ)でした。合法的に滞在していても、何か不都合があれば国を出ていかなければならないというストレスがあった。大きな家具は買えなかったですね。借り物の時間を過ごしているような感覚でした」
--日本で働く外国人にも、似たように感じている人はいるかもしれません
「お前は何者か」
「日本に来る労働者は、お金や夢といった祖国ではかなえられない何かを求めているはずです。ここではないどこかに理想郷があると信じている。けれども、日本で幸せになれるかというと、たぶんなれません。同じように、日本人にとっても、外国人に来てもらいさえすれば幸せになって日本が理想郷になる、とはいかないはずです」
--なぜ、そう考えられるのですか
「世間の都合に振り回されると、いつまでも現状に満足することがないからです。私は両親にお見合いを勧められるのが嫌で米国に行ったのですが、つらくて苦しかった過去も、そのおかげで現在があると思えれば、キラキラしてくる。反対に現在の自分に本当に満足することがなければ、過去にも未来にも不満を抱えてしまいます」
「天台宗の宗祖、最澄は『国宝とは何物ぞ。宝とは道心なり。道心有るの人を名づけて国宝と為す』という言葉を残しました。道を修めようとする心を持つ人こそが、国にとってなくてはならない存在だと説いたのです。一人一人が置かれた立場で精いっぱい輝くことが、国を輝かせることにつながるのだと思います」
--外国人との共生によって、日本人のありように変化はあるでしょうか
「米国は世界中から人が集まる移民の国ですので、私は住んでいた当時、常に『お前は何者か』という問いを突きつけられている感覚がありました。外国人労働者が増えてくると、日本人も日本で暮らしながら、そう感じるようになる日が来るのかもしれません」
国の在り方を考えよ
--異文化に触れる体験は、自分自身のよりどころを再確認させます
「グローバリゼーション(地球規模化)が叫ばれて久しいですが、外国人に迎合するのではなく、日本人として相手と対等に向き合うことが真のグローバルな態度です。たとえ言葉が通じなくても、英語を勉強するよりは古文や茶道など日本の文化を学んで、日本らしさに立ち返る方がいいでしょう」