働き方

“日本式共稼ぎ”がこれほど疲弊するワケ ワーク・ライフ・バランスの勘違い (2/3ページ)

こんなに疲弊しているのは日本くらい

 ワーク・ライフ・バランスが進んでいるEUの国でも日本でも、法律が定める基本的な労働時間にはそれほど違いはありません。ただ、時間外労働の規制については、いわゆる36協定のこともあって、日本のほうが格段に緩いものでした。

 それに、欧米はもちろん東南アジアを見ても、夫婦ともに仕事が忙しい場合は家事をアウトソースしています。仕事も家事もこんなに長時間やり、疲弊しているのは日本だけ。そろそろグローバル基準に合わせたほうがいいのではないでしょうか。私はカナダにいたことがありますが、カナダの労働者たちは仕事を定時で終わらせ、平日でもテニスをしたり映画に行ったりと「ワーク・ライフ・バランス」の「ライフ」を楽しんでいました。それでも所得水準は日本と同じか、あるいはもっと高いものになっています。

 これから日本は労働力不足になりますから、外国人労働者へのニーズが増えてきています。いまでも外国人労働者はすでに多く入ってきており(図表2)、外食やコンビニの経営は外国人労働者抜きでは難しくなってきています。外国では日本のように定時が来てもなかなか帰らないといった習慣はなく、当たり前のようにきっちり終業時間で帰ります。外国人労働者が増えていけば、雇う側も考え方を変えるしかなくなるでしょう。

ブラック企業が淘汰される仕組みが必要

 労働者を支援する体制の質も量も不足している日本の現状では、とくに中小企業などでひずみが出て、ブラック企業になってしまいがちです。一方、政府が失業者の面倒を手厚く見る国では、ブラック企業が存続すること自体が難しくなります。失業給付金が十分に給付されるなら、きつい会社はみんな辞めてしまうからです。よく報道でも「ブラック企業を監視しろ」と言われますが、会社を辞めた後の生活の保障がしっかりしていさえすれば、監視をしなくてもブラック企業には人が集まらず勝手につぶれていきます。

 いわゆる働き方改革には、そういった労働市場の原理を利用した手法も取れるはずです。行政はその循環に気づいていないのか、監視を厳しくしようとしますが、それでは企業は逃れようとするだけ。現状では、労働者は失業したら生活が厳しくなるため、ブラック企業でも職にしがみつくということになっています。

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