高論卓説

甘い話だけではない副業解禁 「追い出し部屋」という負の側面も (2/3ページ)

 企業サイドにも、大きなメリットがある。転職をしやすい環境になっている中で、有能な社員にいきなり会社を辞められては困る。副業を認める目的は、「社員をつなぎ留める環境をつくる」ことだ。

 しかし、副業解禁には真逆の狙いも込められている。それは「社員を辞めさせやすい環境をつくる」というものだ。経団連の中西宏明会長や、トヨタの豊田章男社長らが相次いで「終身雇用制度を維持することはもはや困難」と発言したことが話題になったが、これは「一つの会社に頼らず、セカンドキャリアを自ら開拓していってほしい」というメッセージだ。一つの会社への過度の忠誠心は不要ということである。

 つまり、副業解禁には、ある種の毒のようなものが含まれている。転職予備軍のあぶり出しである。某企業の人事責任者は「幹部候補生が副業を申請してきた場合、社業に専念するよう説得する場合が多い。それに対して出世コースから外れた社員が申請してきた場合には大歓迎」と本音を漏らす。この企業は採用ホームページで副業が認められていることを前面に打ち出しているのだが、本音と建前には乖離(かいり)があるようだ。しかも、多くの社員がそのことを知っているという。

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