事務系を中心に、AIや機械に代替されると予想される職種に就いていたとしても、多くの日本企業の場合は簡単にリストラされるわけではなく、どこか別の部署への異動などで雇用は保証される可能性が高い。また、働き手が少なくなるため、企業側は従業員が働きやすい環境をつくって退職者を減らし、終身雇用や各種制度に力を入れていくようになるというのだ。
「ある大手商社で退職者が増えたのですが、退職者が皆ベンチャー企業に転職してしまったことがありました。なぜ食い止められなかったのかを考え、働きやすくする制度に改善したところ退職者が減った、という事例もあります」
外資系や金融系など転職が必要な職種も
まさかの「会社が守ってくれる」説に驚いたが、この考え方が通じるのは、日本企業に多く見られる「内部労働市場型」の職場の場合で、「外部労働市場型」の外資系や金融・IT系企業にはあてはまらない。
「内部労働市場とは、新卒でも中途入社の社員でも、スパイラル状にいろいろな部署に配属して経験を積ませることにより、少しずつ昇進・昇格を図る方法です。社長の選出も内部から行います」
つまり、新卒入社して定年まで同じ会社で働くような、昔ながらの日本企業の在り方がそれ。長く会社に勤めてもらえるよう、集団のなかで人を育てる「母性文化」を持っているから、簡単にリストラをしない、というのだ。一方、欧米に多く見られる外部労働市場の場合、各職種、階層ごとに、欠員が出たらそこに直接人員を補充する方法をとっている。
「個を優先する『父性文化』ですから、社内で経験を積むための異動(キャリアパス)は存在しないため、転職を重ねて自らキャリアアップを図っていく必要があります」
ある日、トップが代わる日が来たら?
では、自分は日本的な企業に勤めているから将来絶対安泰なのか、といえばそうでもないという。
「近年は大企業で、いくつかの企業を渡り歩いて経営を任されてきた『プロ経営者』に社長が代わるということも多いですよね。また、買収や合併なども増えてきました。そうなったとき、経営者のマネジメント方法によって、培ってきたカルチャー(風土やマネジメントスタイルなど)ががらりと変わってしまうことがあります」
つまり、自分の意見に右へならえと社員に強制するトップダウン型なのか、トップの理想をマネジメント層が把握し、部下にそれを実現化できるように働きかけるミドル・アップダウン型なのか、現場社員の裁量権が強いボトムアップ型なのか、トップのマネジメント方法によって重宝される人材が変わるため、カルチャーが変わるのだ。
「転職は、より給料や待遇がいい会社に移るときにするものとイメージされるかもしれませんが、日本では『カルチャーが変わってしまった』『やりたいことがやれなくなった』からというケースが多いのです」
いまよりも報酬アップを期待して転職する場合は、外資系企業や外部労働市場型を導入しているIT系などへの転職が向くが、自身が望んでいないのなら、無理に動くことはなく、現状維持でいい、というのが武元さんの考え方だ。
「安定して長く働かないと、家庭のプランも立てられません。住宅ローンを払えるのか、子どもを育てていけるのか。雇用の安定は日本ならではの文化ですから」
その日のためにできることはある?
そうはいっても、転職の転機は来るかもしれない。そのためにいまやっておくべきことはないのだろうか。
「人と企業のマッチングがうまくいくかは、その人のタイプと企業のカルチャーが合っているかにかかっています。転職先を探す際は、『自分を振り返ること』と『転職先企業のカルチャーを調べること』はしたほうがいいでしょう」
その具体的な方法が、振り返りシートだ。