「準備は、シンプルに限る。女の子にポーズなんか指示しない。彼女たちには、自分のやりたいように動いて、とお願いするだけだ。その一連の動きのなかで、ハッとする瞬間を切り取る」
彼の写真でみる女性たちは、どれもとても自由な空気を醸し出している。技術が未熟なところで設計に気張っても仕方がなく、シンプルなことを最高に表現することを初期の目安にしたのだ。その写真がファッションメーカーの広告やカタログになる。
一人の人間ができることなんて限られている。
「写真もすべてなんてカバーできない。風景やスポーツの撮影をするなら、カメラやレンズの種類も変えないといけない。ぼくはファッションにしか手を出さない」
写真家として独立しないのだろうか。
「目標にはかなり近づいてきたが、本業との調整が難しくなり、もう少し自分のフィーレベルがあがった時に考えるかもしれない」
自宅でのんびりとすることが苦手な彼は、映画をみれば何日かかけて一本を見終え、本は細切れで読む。読書家とは縁遠い。多くのインプットを避け、少ない情報で多く深く考える。
ソファに座るのはユベントスのアウェーのゲームをテレビで見るときだけだ。
プラグマティズムの道を力強く歩むエマヌエレの目は野性的である。
【ミラノの創作系男子たち】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが、ミラノを拠点に活躍する世界各国のクリエイターの働き方や人生観を紹介する連載コラムです。更新は原則第2水曜日。アーカイブはこちらから。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ローカリゼーションマップ】も連載中です。