ミラノの創作系男子たち

「ムラトーレ」の息子のチャーミングな仕事 ジュエリー作家になったわけ (3/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 彼のビジネスをみていて意外に思えることが2つある。

 一つは「知性溢れ、美しい」(アントニオ談)奥さんが大手銀行の現役社員であることだ。若き日にジュエリーの店をオープンさせ軌道にのせた場合、奥さんが経理などバックオフィスをみていることが多いが、彼の奥さんはその頃も今も銀行員である。

 2つ目は、20代の2人の息子が、同じようにアルティジャーノとして父親の職場で働いていることだ。3年前からだ。地方の小さな町の家族経営の会社ならいざしらず、ミラノのような都市で成功したジュエリー店の息子は、経営学を勉強して外で修業する、デザインやコミュニケーションを勉強して自らの手は汚さない選択をする例をみる。

 しかし、2人の息子たちの技量は父親の目からすれば「まだまだ」であるが、工房で手を使ってモノを作っている。確かに若い世代の一部に、職人の世界への憧れをみることがあるが、息子が両方とも親父の道を継ぐことにしたのは、アントニオの姿があまりにチャーミングだったのではないか。

 まったくの想像であるが、親子4人の食卓でアントニオはやはり涙を流すのではないかと、そのシーンをぼくは思い描いた。

 泣くことに抵抗がない大人の男には、そうとうに惹かれる。それをぼくはアントニオとの会話の中で初めて気づいた。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ミラノの創作系男子たち】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが、ミラノを拠点に活躍する世界各国のクリエイターの働き方や人生観を紹介する連載コラムです。更新は原則第2水曜日。アーカイブはこちらから。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ローカリゼーションマップ】も連載中です。

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