今日から使えるロジカルシンキング

顧客の要望に従って良いのか 優秀な人は「なぜ?」の繰り返しで根治を目指す (1/3ページ)

苅野進
苅野進

第8回 「なぜ?」で根本解決へ〈基本〉

 上司やクライアントをもっとスムーズに説得できたら…。仕事でこんな風に思ったこと、ありませんか? この連載では、子供にロジカルシンキングを教える学習塾ロジムの主宰・苅野進が、SankeiBiz読者のみなさんに、ビジネスパーソンにとって重要なスキルであるロジカルシンキングの基本スキルを伝えていきます。

要望に“忠実に”従って良いのか?

 「図形が苦手なので個別指導をしてください」

 私の経営する学習塾でよくある風景です。顧客である保護者からの要望ですから、すぐに担当講師を手配することがこちらの仕事となります。しかし、長い目で考えると一歩立ち止まってみなくてはなりません。「図形の個別指導を受けた後に、顧客は満足するのだろうか?」ということです。顧客の要望に「忠実に従って」個別指導をすることを疑うのです。

 顧客の目的は個別指導を受けることではありません。個別指導を受けることで、図形が得意になり、さらに算数の成績が上がることです。個別指導が本当にそこに繋がるのか? を考えなくてはいけないのです。

根本原因を解決しない限り「症状」は再発する

 今回は、「症状」と「根本原因」について考えます。ビジネスにおいて顧客が「~をして欲しい」と声をかけてきてくれた時ほど嬉しい状況はありませんね。目の前に、自分のサービスを信用してお金を払うつもりで立ってくれているのです。「こんなことで困っている」「これをやって欲しい」という声には瞬時に対応したくなりますね。しかし、多くの場合、顧客が訴えているのは「症状」です。

 学習塾の事例で言えば、「図形が苦手」というのはなんらかの原因から生じているものなのです。それが、「図形の授業の解説が理解できなかった」という原因から発生したものであれば、個別指導によって丁寧に解説してもらえれば解決するかもしれません。しかし、それが「集団授業の復習をうまくできていない」ということが原因だったらどうでしょうか。個別指導で理解したとしても、復習できないことによって再び忘れてしまうことでしょう。

 このように「症状」というのは、根本原因を探って解決しない限り必ず再発します。同じ症状が現れることもあれば、別の症状が現れることもあります。目の前の症状を抑えたり、顧客の要望する治療や対処を実行すれば、とりあえずサービスを提供したことになり、お礼と代金は貰えるかもしれません。しかし、再発を繰り返すようではいずれ満足度は下がっていきます。

 また、優秀なサービス提供者は必ず「根本原因」を探って解決することで顧客の期待以上の結果を提供するものなので、顧客の言う通りにサービスを提供していたのにスイッチされてしまうという事態もありえるのです。

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