唯一の救いは「第三者委員会」
では、社外取締役制度が機能しないのなら、もはや日本企業の”サラリーマン犯罪”を防ぐ術はないのか。このシビアな現実を前にして、河合氏が「唯一の救い」と捉えているのは、第三者委員会だ。
「私がこれまで被害者の弁護を請け負ってきたケースなどでも、後ろめたいことがある企業は絶対に第三者委員会はつくりません。裏を返せば、何か問題が起きたら第三者委員会をつくるのが当たり前のような世の中になれば、企業の不祥事をだいぶ抑えることができるのです」
確かに、支離滅裂な言い訳を繰り返して、次から次へと問題が浮かび上がった吉本興業が、経営に対してなんの効力もない「経営アドバイザリー委員会」を立ち上げてお茶を濁したことからも分かるように、「問題企業」ほど、どうにかして第三者委員会を設置しない道を模索する事実がある。
「と言っても、第三者委員会ならなんでもいいというわけではなく、世間の批判をかわすためにとりあえず知り合いの弁護士に頼みましたという“なんちゃって第三委員会”ではありません。有名な“ヤメ検弁護士”なんかがやっている第三者委員会も危ない。久保利英明(第三者委員会会報告書格付け委員会を設立した弁護士)や中村直人(スルガ銀行の第三者委員会委員長を務めた弁護士)という金や権力に屈しない気骨のある弁護士が中に入って、徹底的に内部を調べ上げるようなものが望ましいです。少なくとも日弁連の推薦を受けたような人ではないといけませんね」
日本企業の「セコい不正」がいつまで経ってもなくならないのは、本物の「第三者委員会」が普及していないからなのかもしれない。
(ITmedia)