日本の議論

「先進国並みに」「実態に注目を」 最低賃金、引き上げどうする (2/4ページ)

 --韓国では自営業者が人件費の負担増に耐えかねて雇用者を減らした

 「日本では6月の完全失業率は2.3%とほぼ完全雇用に近く、今は失業率の上昇を心配する状況ではない。日本は、労働者の質が世界4位と悪くないのに、賃金だけが異常に低いところにはりついている。最低賃金を上げるのは、普通の先進国と同じレベルに戻すためでもある。その場合、経営効率の悪い中小企業が淘汰(とうた)され、そこで働く人たちの雇用が一時的に失われることは避けられないが、長期的には経営効率の悪い企業は買収され、雇用も移行するだろう。当事者にとっては大変な問題ではあるが、労働者を低賃金でしか雇用できない企業を温存し続けることがいいことなのかは考える必要がある」

 --6月に発表された「骨太の方針」では、全国一律1千円となる賃上げが提起されている

 「地方と東京では200円ぐらい違うが、地方で若者に働いてもらうためにも、地方の賃金を東京の賃金に近づける方向性は間違っていない。最低賃金の引き上げは、パート労働者を中心とした賃金が底上げされることによる消費拡大も期待でき、地方経済の活性化につながる」

 --企業がやるべきことは

 「日本では今後、労働人口が毎年1%ずつ減っていく。低賃金で人をこきつかうような仕事は成り立たなくなる。労働者を大事にしない企業の存続は難しいことを経営者は認識すべきだ」

(平沢裕子)

 いけだ・のぶお 昭和28年、京都府生まれ。東大卒業後、NHK入局。報道番組の制作に携わり、平成5年退職。経済産業研究所上席研究員などを経て、言論サイトを運営するアゴラ研究所所長。

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