社会・その他

揺れる贈答文化 関電問題で指摘された「儀礼の範囲」は? (2/2ページ)

 一方、金融機関の場合は贈答品を受け取った際、会社に報告するのが「一般的」という。公益性の高い電力事業を営むエネルギー業界では、金品の受領を指針で制限している企業もあり、九州電力はコンプライアンス行動指針で、歳暮や中元を含めて取引先からの受領を禁止。中国電力も贈答品や金券の受け取りは原則禁止で、大阪ガスは発注や資材の購買に関わる部署で原則禁止としている。

 とはいえ、こうした企業はいずれも民間企業。専門家はどう見るのか。

 企業倫理に詳しい近畿大経営学部の芳沢輝泰准教授は一般論として「数十万円もするスーツ(仕立券)などは、明らかに常識を逸脱している」と指摘。その上で「倫理的な規範となる制度は必要だが、おのおのが守らなければ機能はしない。最終的には、それぞれのモラルが問われている」と話した。

     

 歳暮商戦本格化も市場規模縮小、きっかけは…

 日本人が長い時間をかけて育んできた贈答文化には人間関係を築いたり感謝の気持ちを伝えたりと、さまざまな意味が込められている。今年も各地のデパートでは令和初となる歳暮商戦が本格化。ただ、バブル崩壊などを機に市場規模が縮小しているとのデータもある。

 歳暮の由来は諸説ある。その中の一つが、正月に先祖の霊を迎える祭りの供え物を、前年の暮れのうちに本家に届ける風習がもととなったとの説だ。これが江戸時代には、世話になった人に贈り物をする慣習に変化。贈る時期は12月初旬から20日頃までが目安とされる。

 矢野経済研究所(東京)が昨年11月に公表した調査結果によると、お歳暮の市場規模は平成27年に小売金額ベースで9995億円だったが、年々減少しており、令和元年は9150億円と予測する。同研究所は「儀礼的な要素の強いギフトは時代の流れとともに縮小傾向にある」としている。

 日本贈答文化協会(東京)によると、縮小のきっかけになったのはバブル崩壊だという。「冷え込む経済を背景に、社内での中元や歳暮をやめようという風潮が広まった」(担当者)。一方、中元や歳暮文化が衰退しても国内のギフト市場そのものは堅調であることから、担当者は「日本人の贈答文化は根付いているとの見方もできる」と話した。

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