働き方

「3年泳がせる」は嘘、副業はいくら以上儲かったら申告が必要なのか (2/3ページ)

 郵便受けに税務署からの地味な封筒を見つけて「税務署?うちには関係ないよな……」と封を開けずにゴミ箱に捨ててしまってはいけない。今度は自宅の電話に留守電が入るだろう。それでも無視していると、予告なしに自宅に税務署の調査官がやって来ることになる。

 副業の申告漏れで約300万円の増差所得になることも

 副業をしていてそこそこ儲けがあると自覚している人は、確定申告をしているだろう。ここで、副業をしている人にありがちな思い込みについて忠告したい。確定申告書を提出し、1年たっても税務署からなんの連絡もないなら、その申告内容は認められたと思ってはいけない!

 副業についてわかりやすく説明するために、週休二日制の企業に勤めていて、土日で結婚式のカメラマンを日当1万円で請け負った場合について考えてみよう。

 1万円×2日×4週×12カ月=960,000円

 必要経費は、機材の購入費用と式場までの交通費と式場で着るスーツくらいだろうか。もし、機材は元請けが用意してくれて、式場も本業の通勤圏内であれば定期が使えるだろう。スーツも、撮影する裏方なので普段本業で着ているもので間に合うということであれば、別段経費は発生しない。

 この人の本業の税率が20パーセントであれば、申告していなかった96万円の20パーセントを所得税として納めることになる。プラス、加算税と延滞税、地方税も追加で納めなければならない。3年間申告していなかった場合、

 960,000円×3年=2,880,000円

 が申告漏れ所得(増差所得)となる。立派に調査件数1件となるだろう。

 税務署はやむを得ず納税者を“泳がせて”いる

 ここで、今回のサブタイトルに「税務署は3年泳がせているなんてうそっぱちだ」と書いた種明かしをしよう。

 『税務署は3年泳がせる。』は何を隠そう、筆者の著書のタイトルである。

 税務署は、余裕があって、わざと3年泳がせているようにも思えるが、実はそうではない。税務署は3年泳がせざるをえない、という現実にあるのだ。ちょっとへ理屈みたいになってしまったが……。

 筆者は、今年の“税を考える週間”の期間中に開催された、所轄の税務署の職員との懇談会に参加した。

 管轄内に法人がある代表者と幹部で、いろいろな話をした。プレジデントオンラインで書いたチュートリアルの徳井氏についての記事のことも話題になったが、その際、税務署の幹部はこう言ったのだ。「国税当局としては、職員の数が増えない。限られた人数で事務をこなさなければならない。よって、実調率は下がってきている」

 本来であれば、申告した内容に間違いがあれば、直ちに臨場し、修正申告を提出するよう指導すべきところであるが、調査に従事する人員が確保できていないから、ままならないというわけだ。

 間違ったまま3年間野放しにしておけば、その分罰金を多くとることができるという理由も一部あるのかもしれないが、それは定かではない。

 副業で63万円以上稼ぐと税務調査が現実味を帯びる

 税務調査には、いろいろな種類がある。

 一般事案と呼ばれるものは、電話で事前通知をし、約束した日時に臨場するというお行儀のよいものから、複数名が連絡もせず自宅、事務所、店舗、愛人宅まで、同時刻に一気に入る特調事案という手荒なものもある。

 それ以外に、あまり知られていないが、筆者が現職の時、大阪国税局管内では、“事後処理”と呼ばれる調査があった。1件当たりにすると、追加の税金はそれほど多くはないが、どの項目が申告もれになっているか、ピンポイントでつかんでいるので、わざわざ現場まで足を運ばなくても税金をとれるという案件だ。税務署に居ながらにして、多くの数の修正申告をとれる。考えようによっては、効率のよい方法といえる。

 よく知られているのが、扶養家族を否認することでの申告だ。離れて暮らす大学生の子どもが、扶養家族に入れる範囲を超えてアルバイト収入を得ていたことがわかり、父親が申告をし直すというもの。

 この際、父親が追加の税金を払う計算の元になるのが、大学生の扶養控除の金額630,000円だ。特定扶養親族というものだが、控除対象扶養親族のうち、12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人は、控除額がこの金額になっているのだ。

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