社会・その他

和歌山の猟友会に「女性部」 “狩りガール”が脚光を浴びる背景は

 狩猟シーズンに野生鳥獣の駆除などをする猟友会。和歌山には全国的にも珍しい女性部がある。顔ぶれは美容師や大学講師、カフェの経営者など多士済々。こうした「狩りガール」が脚光を浴びる背景には、野生鳥獣の肉を使用したジビエ料理ブームなどがある。(西家尚彦)

 ハートを打ち抜かれた

 パァーン、パァーン。10月下旬、和歌山市北部を流れる紀の川河川敷に乾いた銃声が響いた。散弾銃を構えた女性の視界をカワウが横切ったのだ。

 女性は同市加太の美容室経営、溝部名緒子さん。川のアユを食い荒らす鵜(う)の駆除が目的で早朝から猟区でハンティングをしていた。

 夫の転勤で同県有田市に住んでいた約10年前、地元の猟友会会員に誘われ、キジ猟を見学したのが狩猟に興味を持つきっかけだった。その後、イノシシやシカの猟にも同行。仕留めた獲物をその場で手際よく解体する会員の姿に、「格好よくてハートを打ち抜かれた」。

 6年前に故郷の加太に戻った際、散弾銃の所持・使用が認められる第1種銃猟免許を取得。県猟友会に所属し、昨年10月に自らの発案で女性部を立ち上げた。

 女性会員は増加

 大日本猟友会(東京)によると、全国の会員数は約10万5千人(平成30年度)で、高齢化などにより減少傾向にあり、約10年間で2割減となった。

 一方、近年はジビエ料理ブームのほか、女性にも人気の狩猟漫画「山賊ダイアリー」(岡本健太郎著、講談社)などの影響で、女性会員は集計を始めた27年度(約1180人)以降、増加傾向にあり、昨年度(約2130人)は初めて2千人を超えた。

 それでも、全国的に女性による専門部があるのは和歌山のほか福井や大分などごくわずかで、会の担当者は「ここ数年は会員を募るポスターに現役の女性猟師を起用しており、特に女性の新規勧誘に力を入れている」という。

 和歌山では、シカやイノシシ、サルなどによる農産物被害が例年3億円を超え、県農林水産部も「鳥獣害の駆除にあたる女性ハンターの活躍は頼もしい」と期待を寄せる。

 免許取得の相談会も

 県猟友会女性部は現在、65人ほどの会員がいる。10月27日には和歌山市で発足1周年を記念するイベント「狩りガールフェスタ」を開催した。

 会員で第1種銃猟免許を持つ道下優海(ゆみ)さんは、29年に東京・渋谷から同県田辺市龍神村に移り住み、地元でカフェを経営する。イベントでは「狩りガールの体験談」を披露し、「大切に育てた野菜が日々、イノシシに食い荒らされる。『食べられたら、食べ返す』。そんな心意気で狩猟を行っています」と会場を沸かせた。

 また、会員で近畿大先端技術総合研究所講師の松橋珠子さん=同県岩出市=は、ジビエ肉のカレーの炊き出しに協力。「農産物を食い荒らす野生動物がなぜ里山だけでなく市街地でも増加しているのか。ハンティングを通して一緒に考えていきたい」と話す。

 イベントでは、女性を対象に狩猟免許の取得方法に関する相談会も開催。当初は数人程度の参加を想定していたが、約20人が訪れ盛況だった。龍谷大農学部3年の海津荘乃子さん=京都市=は「狩猟は『男の世界』というイメージがあったが、女性部の存在を知り、一気に身近な存在になった」と関心を持った様子。

 溝部さんは「女性同士がおしゃべりしながら気軽に狩猟ができるように、仲間を増やす活動に取り組みたい」と意気込んでいる。

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