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伝説の「半沢直樹」金融庁検査官モデル 不良債権問題と戦った実直人生 (1/2ページ)

 人気テレビドラマ「半沢直樹」(池井戸潤さん原作)に登場する、金融庁の黒崎検査官のモデルとされた金融庁元検査官の目黒謙一氏が12月2日、亡くなった。享年72。退官後は外資系コンサルタント会社や住宅ローン専門の保証会社に勤務、近年は、がんとの闘病を続けていたという。片岡愛之助さんが演じた黒崎検査官はオネエ系でプライドの高いキャラクターだった。だが素顔の目黒氏は朴訥で、検査に入った銀行のトイレのゴミを自ら拾うような、腰の低い人柄だったという。(沢志穂)

 目黒氏は宮城県出身、高卒で1966年に旧大蔵省に入省し、金融機関の検査を担当、現在の金融庁が分離して発足した後も一貫して、ノンキャリア組のベテラン検査官として活躍した。

 UFJ検査忌避、みずほ1兆円増資…「目黒ショック」

 バブル経済崩壊で表面化した、1990年代から2000年代にかけての大手銀行の不良債権問題では辣腕をふるう。特に2002年秋に竹中平蔵金融担当相(当時)がまとめた金融再生プログラムでは、2005年3月までに大手銀行の不良債権比率を半減させる目標が示され、目黒氏は比率の高いUFJの専任となった。大口債務先を精査した「特別検査」ではUFJの資料隠蔽・改竄が発覚。「100箱もの内部資料を別室に移した」「資料を食べて隠した」などの事態が明るみになり、金融庁は銀行法違反(検査忌避)でUFJを告発。経営陣は総退陣し、のちの三菱UFJフィナンシャル・グループへの再編につながった。

 この時代には資産査定の厳格化で大手行の赤字決算が相次ぎ、みずほフィナンシャルグループの1兆円増資、三井住友銀行の西川善文頭取の辞任など銀行界が揺れた。いずれも目黒氏の検査が引き金になっており、「目黒ショック」ともいわれた。

 「強面検査官」の素顔

 「強面検査官」のイメージが強い目黒氏だが、その素顔は、公務員のお手本のような実直な人物だったという。金融庁の元部下は「検査官が大きな権限を持っていることを十分、承知しており、金融機関に対して決して威圧的な態度はとらなかった」と振り返る。検査の際も、立ち入る前より会場を綺麗にするよう指示、「自らトイレのゴミも拾っていた」。当時は多くの新聞やテレビ、雑誌など報道各社が目黒氏を追いかけたが、ほとんどの記者が接触できなかった。決して表に出ない、控えめな人物でもあった。

 大変な部下思い、後輩思いでもあり、在任中に亡くなった部下の墓参は毎年、欠かさなかった。後進の指導に力を尽くし金融庁には薫陶を受けた「目黒チルドレン」の検査官が今も多数いる。

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