社会・その他

お賽銭もキャッシュレス、どう思う? 評判悪くないが仏教界は「不適切」

 「キャッシュレス元年」とも呼ばれた令和元年。その波は宗教界にも広がり、神や仏に奉納する賽銭(さいせん)を、電子マネーで受け付ける寺社も出てきた。小銭を持ち歩かない外国人旅行客への対応や防犯対策で利点があり、利用者の評判も悪くないという。一方、宗教に関する個人情報の流出や課税への可能性を懸念し、「不適切」と訴える声もある。

 「現金にこだわる必要なし」

 四国八十八カ所霊場の一つ「平等寺」(徳島県阿南市)。空海が814年に建立した古刹(こさつ)は、平成30年12月からキャッシュレス賽銭を試験的に導入した。

 本堂にあるタブレット端末に任意の金額を入力し、決済アプリを立ち上げたスマートフォンをかざす。これで賽銭が完了する。

 「社会のキャッシュレス化が進む中、寺社も変化する必要があると考えた」と話すのは谷口真梁(しんりょう)住職(40)。一方、導入後1年間で利用者は50~100人程度にとどまり、割合でいえば1%にも満たないという。

 しかし、意義は大きいと考えている。かつて寺社には現金ではなく、米や野菜を供える風習があった。これが貨幣経済の浸透で賽銭へと変化した。谷口住職はこうした過程を踏まえ、「現金にこだわる必要はない」と指摘。「通貨に代わる新たなものがあれば、検討するのは当然だと思う」と力を込める。

 下鴨神社も導入

 東京・港区の愛宕(あたご)神社は、年始の仕事始めの日に限り、キャッシュレス専用の賽銭箱を設けていた。

 賽銭で集まった小銭を金融機関に入金する際に手数料が取られることがあり、「せっかくの浄財が減るのを避けたかった」(担当者)。泥棒対策になることに加え、神社周辺で現金を持たないビジネスマンが増えたことも背景にあるという。

 賽銭ではないが、年間300万人が訪れる世界遺産・下鴨神社(京都市)も今年5月から、授与所でのキャッシュレス決済を導入した。クレジットカードや電子マネーを使い、お守りなどへの支払いができる。

 「(現金を持ち歩かない)外国人旅行者の要望やキャッシュレス化を進める政府の方針も踏まえて導入を判断した」(担当者)。現在、授与所でのキャッシュレス決済は、全体の1割程度を占めるという。

 「収益行為」?

 賽銭などのキャッシュレス化には否定的な意見もある。

 京都府内の約1千の寺院が加盟する「京都仏教会」。昨年6月、宗教活動のキャッシュレス化は「不適切で受け入れない」とする声明文を発表した。

 同会は、賽銭や拝観などの宗教活動がキャッシュレス化すれば、参拝者や信者の行動や個人情報が第三者に把握されるリスクがあると指摘。また、手数料の発生により、これまで「宗教行為」とみなされていたものが「収益事業」とされ、課税される可能性も出るなどと訴えている。

 一方、売店などで扱うポストカードやお土産などのキャッシュレス化は容認した。担当者は「神道やキリスト教など他の宗教にも私たちの考えをお伝えした」と話す。

 帝塚山大文学部の岩井洋教授(宗教社会学)は「(キャッシュレス化が進み将来的に)宗教の財務状況が丸裸になることへの危惧があるのだと思う」と推測。その上で「まさにバランスの問題。キャッシュレスにしていい部分と、どうしても違和感がある部分を分けて議論するのも、一つの手だと考える」と述べた。

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