働き方

2020年は日本の雇用システム大転換の年か ジョブ型・大量早期退職の時代へ (2/3ページ)

 25歳と40歳が同じ給料に

 じつはジョブ型雇用と日本的雇用システムとは真逆の関係にある。日本の場合は、その人の潜在能力や特性を見て「この仕事ならやれそうだ」と、配置(配属先)を考える。そしてある程度技能が向上すると「この仕事もやれるのではないか」と期待を込めて次の仕事を与える。つまり人を見て仕事を当てはめる「人基準」が基本だ。

 それに対して欧米のジョブ型は、やるべき仕事(職務=ジョブ)が明確に決まっており、その仕事をこなせる人を当てはめる「仕事基準」が基本だ。

 したがって、日本的雇用システムでは専門性を持たないノースキルの新卒の学生でも採用されるが、欧米では専門スキルが重視される。そして給与もジョブで決まる(職務給)。年齢は考慮されず、どんな職務を担当しているかという仕事の内容と難易度(ジョブグレード)によって決まる。もちろん仕事と関係のない扶養手当や年齢給、持ち家の有無で決まる住宅手当など属人的手当もない。また、同じ職務にとどまっている限り、25歳と40歳の給与は変わらない。給与を上げようと思えば、がんばって職務レベルを上げるか、給与の高い職務にスイッチするしかない。

 言うまでもなく経団連がジョブ型採用を提起しているのは、AIやデータサイエンスなどの先端のデジタル技術者を高額の報酬で獲得できるメリットがあるからだ。アメリカや中国などに比べてAI人材の数が決定的に不足しているという事情もある。

 同年齢でも給与に格差

 しかし、問題は日本的雇用とジョブ型の異なる2つの仕組みを同じ企業内で併用できるかである。仮に従来の新卒一括採用の「総合職」とジョブ型の「専門職」の複線型のコースを作れば、一方は年功型賃金、もう一方は高報酬型変動賃金となり、同じ年齢でも大幅な給与格差が生じる。たとえば総合職コースの30歳社員は年収600万円、専門職コースの社員に3000万円が支給されることも想定される。それによって社員間の妬(ねた)みや嫉妬が生まれ、会社の一体性や仕事に対するモチベーションが低下しないのか。

 じつは大手企業の中にはすでに高額の報酬でデジタル技術者を雇っている。大手人材紹介業の社長は「電機、自動車などの日本の大手企業でも優秀なデジタル技術者であれば最低でも1500万円、2000万円の年収を提示してくる」と語る。しかし、入社しても普通の社員ではないという。

 「どこの企業も自社の賃金体系の縛りがあり、同じ年代の社員よりはるかに高い給与を払うことはできないし、仮にそんなことをすれば必ず社員間で妬みや嫉みなどハレーションが起こる。それを避けるために一般的に2つの方法を使っている。一つはAIやIT事業の別会社をつくり、本体とは別の賃金体系で高い給与を支払う。似たような会社をシリコンバレーなど海外に設置している会社もある。もう一つは正社員ではなく、契約社員として雇うやり方。賃金体系に縛られないので高い報酬が出せる」(前出・社長)

 しかし、こうしたやり方では採用数も少なく、安定した人材の確保には限界がある。できれば正々堂々とちゃんとした人事制度の中で採用したいという思いがある。経団連が日本型雇用システムの見直しを提起した背景にはこうした事情がある。

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