働き方

「仕事好きで長時間労働」派が背負う代償 残業を愛する人々が気づかない危険 (1/3ページ)

 仕事はできるだけ効率よくスピーディーに進めたいもの。ところが、働き方改革の話題でよく聞かれるのが「日本人は生産性が低い」という評価。みんな真面目に働いているのに、なぜか生産性は低い。いや、実はその真面目さが、生産性を下げている原因かもしれない。労働経済学が専門で、日本人の働き方について詳しい早稲田大学・黒田祥子教授が明かす週50時間の危険ラインとは--。

 働けど働けど、なお生産性は高まらず

 1時間働くことで稼ぐおカネ(付加価値)を「時間当たり労働生産性」と呼びます。日本生産性本部が毎年発表するデータによると、日本は47.5ドル(4733円/購買力平価換算)。アメリカの72.0ドル(7169円)に比べると7割に達していません。その状況が25年以上もつづいているのです。

 OECDの加盟36カ国のなかでは20位。G7(フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ)のなかでは、約50年にわたってずっと最下位です。この国際比較を見るかぎり、たしかに日本の生産性は低いということがわかるでしょう。

 日本の働き方で、欧米の先進国と大きく違うことがほかにもあります。長時間労働です。OECDの調査では、日本で週50時間以上働く人は約22%です。ドイツの約5%、アメリカの約12%、イギリスの約13%に比較すると、長時間労働が日常化している人は多いといえます。

 データの裏に「働きアリ」

 日本人の年間労働時間は、現在は1700時間前後でここ10年で見れば減少傾向にあります。1980年代後半までは2100時間でしたから、それに比べると年間の労働時間はかなり減ったように見えます。しかし現在の1700時間には、90年代以降に増加したパートタイマーなどの短時間労働者も含めた平均値となっています。フルタイムで働く男性社員では、現在でも年間の平均労働時間は2000時間を超え、かつて「働きアリ」「ワーカホリック」と呼ばれた働き方は、この30年間で実はほとんど変化しなかったことがわかります。

 長時間労働の是正が本格的に進みだしたのはここ2~3年のことです。2019年4月に改正労働基準法が施行され、大企業では時間外労働の罰則付き上限規制が導入されています。これに先駆け、労働時間の削減に取り組む企業は多くありました。たとえば500人以上の事業所を見ると、フルタイムの男性社員で労働時間が週60時間を超える人は、2015年は13.6%だったのが、2018年は10.9%に減っています。この傾向は女性社員にも、また中小企業の社員も認められるので、日本全体で長時間労働を是正する動きがようやく始まったといえます。

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