高論卓説

増加する女性医師へのキャリア支援 働き方改革推進は患者の利益に

 男女格差の大きさを国別に比較した世界経済フォーラム(WEF)による「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」2019年版が昨年12月に発表された。日本は153カ国中121位、昨年よりもさらに低下し主要7カ国では最下位である。毎年、日本が低い順位にとどまる主な理由は、経済と政治の分野のスコアが著しく低位であることが大きいとされている。(永井弥生)

 医療界における女性医師増加は顕著である。社会的に安定した資格というイメージからか、医学部の合格レベルは年々高くなっている。筆者が入学した頃には全体の1割程度であった女子学生の数が今や3割、4割は当たり前である。それに伴い出産育児でフルタイムの勤務を離れる女性医師への対策の遅れもあり、医師不足、医師偏在の原因としてもクローズアップされるようになった。

 大学病院勤務時代の09年より所属学会、大学病院などで女性医師支援、男女共同参画事業に携わった。全国的に活動が広がり、短時間勤務なども徐々に根付いてきた。当初、女性医師支援といわれていたが、これは女性が育児をするものと決めつけた言葉ではないか、女性だけのことを考えればよいのかという意見もあった。現在では多くの組織において、「女性」対応ではなく男女協働、キャリア支援といった名称に変わっている。

 また、単に働き続けることができればよいということではない。大学でも上位職の女性の数が少ないことが問題とされた。すなわち、組織の方向性を決定する場に女性の意見が反映されないということである。男性の中に女性が1人、2人の状況では、男性社会を気にしての活動になってしまう。一般には、ある程度の数、3割以上に達してようやく女性視点から違う方向を見た方針、政策が提案できるようになるのである。

 都内の大学で女子医学生入試差別問題が発覚し、世間を驚かせたのは記憶に新しい。実際の医療現場では当直勤務から翌日の通常勤務、長時間手術、緊急呼び出し対応など、対応できなければ医療現場が成り立たないという実情がある。とはいっても、入試時の差別を見過ごすことはできない。

 14年、勤務していた大学病院で先進的な腹腔鏡肝切除術後の複数の死亡という問題が発覚した。数年間に渡って起こっていたことが、なぜ分からなかったのかと外部からは厳しく問われ、閉鎖的な組織構造の問題も指摘された。

 現場は大変で、女性が増えるのは困る、入試の操作をというのは表層の問題への対応である。古い閉鎖的な体制に終始していては、変化に合わせた本質の問題への改善がなされず、問題が大きくなってしまう。

 患者さんの立場から、「医師には言いにくい」「医師は特別」という言葉を聞くことがある。医師は特別なスキル、資格を有するとともに最終的な患者さんの命への責任を持つ。良い意味での特別な責任を担う立場と認識することは、その社会的責任を果たすために必要かもしれない。

 しかしながら、全てが特別なわけではない。女性の活躍を含めた「医師の」働き方改革が進むことは、長期的に見た患者さんへの利益、社会への貢献につながると考える。医療界も社会の変化に合わせた進化、患者さんとなる立場の方々との協働が必要である。医師は特別な人とは思わずに社会からの視点を伝えてほしいと思う。

【プロフィル】永井弥生

 ながい・やよい 医療コンフリクトマネージャー。医学博士/皮膚科専門医。山形大医卒。群馬大学病院勤務時の2014年、同病院の医療事故を指摘し、その後の対応に当たり医療改革を行う。群馬県出身。

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