→「オリジナル」へのこだわりを捨てたセブン銀行
セブン銀行がフィリピン向け送金サービスをローンチした際に話題になったのが、マイクロソフトのクラウド上の開発基盤を採用したことでした。銀行といえば、独自に開発したシステムにこだわり、一から作り上げて、時間も費用も膨大にかけるというのが通例でした。しかし、そうすると、新しいサービスに進出する際の費用と時間のリスクが非常に大きくなってしまいます。銀行も新しいサービスに積極的に進出して試していくこと、そして撤退費用を小さくする必要があることから、開発費用・期間も半分以下で済む開発体制に移行したのです。これにより銀行にしては画期的な「スモールスタート」に積極的に取り組んでいくことができるようになったのです。
スキル3:余白を残したプランで相手を「共犯者」にする
顧客や上司といった「相手」の頭の中をあれやこれや想像していても、確信に至ることはありません。相手の好みに合わせたプランを作るには、相手にも参加してもらうことが手取り早いのです。「どこを直すとよいと思うか?」「迷っている部分についてアドバイスが欲しい」という目線で相手にも立案の当事者、つまり“共犯者”になってもらいます。話術としてではなく、より多角的に検討できる建設的なコミュニケーションになるのです。これは、顧客に対してだけでなく、上司に対しても同様です。ラフな段階から共有して、一緒に作り上げる関係に持ち込みましょう。
→婚活エージェントは「これぞ!」という人に絞り込まない
要望通りのスペックや容姿を多くの候補者の中から選び出して、提案するのが婚活エージェントの仕事です。しかしエージェントは、プロの目からみて「この人しかいない!」と感じたとしても、そのように表現して提案することはないそうです。ベストの1人に絞り込まず、必ず複数の候補者を提示するのです。
相談者は、「選ぶ」という作業を通じて、自分が何を求めているのかという優先順位について理解が深まり、最終的な決断に対する納得感が高まるからだそうです。どんなに要望通りだとしても、1人に絞り込んで提案すると「押しつけ」を感じてしまったり、受け身になってしまったりで後々「期待と違った」ということになりやすいそうです。
→ピクサーは「ひどい出来」で首脳向けに試写会を開く
「上司との共同作業」をシステムにしているのがアニメ制作スタジオのピクサーです。
映画内容の方向性を決定する権限のある「ブレイントラスト」と呼ばれるメンバーに対して、かなり初期の「ひどい出来」の段階から試写会が設定されているといいます。上司は評価するだけの存在ではなく、一緒に作り上げる協業メンバーだということです。
このシステムとその哲学が浸透してくれば、「決断」とは自分1人で作り上げるものではないことが理解でき、不必要な足踏みがなくなることでしょう。そして、取り組んでいる商品の質も高まっていくのです。
いかがでしたか? 色々な企業があの手この手で「決断」のスピードを上げ、「決断」が商品の質と顧客の満足度の向上に役立てていますね。共通するのは「たった1人で」「一度きりの」決断をすることは質を低くするという考え方です。ですから、皆さんも「決断」を前にして1人で悩みすぎたり、足踏みをして時間を浪費したりしてはいけません。ぜひ周りを巻き込んだ決断力を身につけてください。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら