働き方

超短勤務、育児に配慮 女性人材の流出防止へ自治体促進

 育児で時間に制約があるけど、働きたい-。そんな女性のジレンマを解消しようと、自治体が動きだした。1日2時間、週2日といった超短時間・少日数勤務の導入を事業者に働き掛け、人手不足の解消や女性人材の流出防止を狙う兵庫県豊岡市の取り組みを追った。

 昼下がり、同市の「テラスハウス保育園」。保育士補助の川見良美さん(34)が、寝静まる園児の体調を確認したり、毛布をかけ直したりしていた。勤務は週3日の午前11時~午後3時。食事の介助や片付けも担う。

 短大で保育士資格を取って働いた後、結婚を機に豊岡市へ越し、出産して専業主婦に。育児は楽しかったが「身内や子供としか接点がなく、自分の時間が欲しいと思うようになった」。仕事を探しても、娘の幼稚園の時間と合わないものばかりで諦めていた。

 市が2017年に実施した市民アンケートでは、就業していない20~30代の女性198人中、8割超の170人が「仕事をしたい」と答えた。多くが「働きたくても働けない」状態で、障壁は時間制約以外にも、仕事から離れていたことへの気後れなど、さまざまだ。

 アンケート結果を受け市は翌年、企業やハローワーク、子育て総合センターと連携して相談会を開催。超短時間・少日数導入に賛同した14社と、育児中の女性約30人を引き合わせた。

 市の施策の背景にあるのは、進学などで市外に転出した10代に対し、転入してきた20代の割合を示す「若者回復率」の低さだ。男性は52.2%なのに、女性はわずか26.7%にとどまる。市ワークイノベーション推進室の若森洋崇室長補佐(49)は「女性が働きやすく、やりがいを持てるまちにすれば、地元に戻ってくる若者も増えるのでは」と期待する。

 超短時間勤務の導入で意識が変わった企業経営者も。かばんの製造・販売を手掛ける「由利」は、以前はフルで働ける人材を重視していたが、学生優位の「売り手市場」で新卒採用が難航。幅広い人材が働きやすい環境づくりにかじを切った。

 従業員約230人の同社では、育児中の女性3人が1日最短3時間のシフトで働く。由利昇三郎社長(55)は「いずれは、フルタイムの正社員になってもらうことも視野に入れている」と話す。

 岩手県も東日本大震災後の人手不足を解消しようと16年から超短時間を後押しし、シニアの雇用も促進。三重県鳥羽市や玉城町も導入している。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus