リモートワーク=在宅勤務ではない
すべての取り組みにはメリット、デメリットがある。その弊害についてもふれておかなくてはならない。テレワークが解決するのは、通勤である。テレワーク導入企業では、通勤時間は減るものの、労働時間が増えてしまうという問題が起こることがある。また、慣れない人にとっては、ビデオ通話を利用した会議などは苦痛だろう。遅延なども起こりうるし、話が聞き取れないこともあるからだ。
なお、リモートワーク=在宅勤務ではないことにも注意したい。テレワーク協会の定義では、この働き方は3つに分類される。在宅勤務と、直行直帰の営業に代表されるようなモバイルワーク、そしてサテライトオフィス勤務だ。ただ、現状のコロナ対策から考えるならば、この中でも推進されるのは在宅勤務ということである。
よく、在宅勤務は育児や介護との両立が可能だと喧伝される。ただ、これらと仕事の両立は修羅場になる。さらに、もし自身や家族がコロナウイルスに感染したら…。デスマーチ状態になる。
そもそも論で言うならば、リモートワークは簡単に始められるわけではない。よく、スマホとノートパソコンがあればどこでも仕事ができるという言説があるが、これもNOだ。セキュリティが確保された状態でなくては本来であればリモートワークをするのは危険である。ネットワークや端末へのログイン、安全なチャットツール、ファイル共有の仕組みなどが必要であるし、さらには勤怠管理の仕組みも必要である。端末に極力情報を残さない仕組みを活用する場合もある。
リモートワークに対応した就業規則も必要だ。これに関しては、わかりやすい雛形が用意され、導入は簡単になったのだが。
このような慣れない状況でリモートワークを行っているこということを理解したい。社内外の人に対する思いやりが必要だ。
そして、このような環境下で仕事を減らしている人たちもいる。フリーランスや非正規雇用で働く人たちである(一部では特需も生まれるが)。社会全体が痛みに苦しんでいることを認識したい。
さて、イベントや飲み会のキャンセルも増えた今、するべきことは何か? インプットである。特に先人たちがどのように困難を乗り越えたのか(あるいは、それができなかったのか)について学ぶべきだ。個人的には『シン・ゴジラ』をみること、『失敗の本質』(野中郁次郎ほか 中央公論新社)を読むことをおすすめする。組織はなぜ腐敗するのか、なぜ優秀だと言われる人たちがいても上手くいかないのか、学ぶことにしよう。
さらに、社内外の人たちが、この困難にどう対応するのか。観察することにしよう。自分自身のあるべき姿や、やってはいけないことの参考になるはずだ。いつか、リーダーになるその日のために。というわけで、国難そのものだが、こういうときこそ平常心でいこう。上を見て歩かなくていいから、前を向いて進もう。
【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。アーカイブはこちら