就業中のマスク着用を命じられたら、購入費用は本人と会社のどちらが負担すべきなのか。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多様な労働相談が全国の弁護士でつくる日本労働弁護団(東京)に寄せられている。同団は身近な事例を盛り込んだQ&A形式の解説をホームページで公開し、不安を抱えながら働く人々の疑問に答えている。(杉侑里香)
Q&Aは実際にあった相談などをもとに、賃金や時差出勤・テレワーク、職場の感染予防など、労働者が直面する14項目で役立つ法律知識を紹介している。
例えば会社都合で休業を余儀なくされ、収入が減少したケース。弁護団は「基本的に100%の賃金を要求するべき」だと指摘する。
また、新型コロナに感染し就業できない間の給料は原則会社に支払い義務はないが、業務中の感染は労災が認定される可能性がある。速やかな補償を求める場合は、「健康保険などに基づく傷病手当金の受給の検討を」とアドバイスする。
今も品薄状態が続くマスクは、接客業では、会社側の判断で就業中のマスク着用を指示することもある。弁護団は、指示は制服などと同じ業務命令にあたるとして、「会社がマスクを準備すべき」だとする。またマスクが入手できずに出社したことを理由とする懲戒処分は、「懲戒権の乱用として無効になる」との見解を示す。
新型コロナの影響による経営悪化を理由とした解雇や内定取り消しも切実だ。ただ、正当な理由がない解雇は無効とされているほか、回避への努力が尽くされたかなどの厳しい条件もあり「簡単には行えない」(弁護団)。解雇ではなく、自発的な退職を迫られる可能性もあるが、弁護団は「退職勧奨には応じる義務はない。労働組合や弁護士へ相談してほしい」としている。
日本労働弁護団のホームページは(http://roudou-bengodan.org/)。