今日から使えるロジカルシンキング

成功する企業は戦略的に捨てている トレードオフは仕事に付き物 (1/2ページ)

苅野進
苅野進

 第25回 トレードオフを理解し「取り組む問題」に集中

  •  「そんな性能じゃあ顧客には受け入れてもらえないよ」
  •  「そんな価格設定じゃあ売れないんじゃないかな?」

 隣の部署の担当者による終わりのない議論はよく見かけますね。平行線をたどるというやつです。性能が高ければ高いほど良いのはわかります。そして、安ければ安いほど良いのもわかります。それぞれの言い分は正しいように思えます。

 今回のテーマは「トレードオフ」です。簡単に言えば、「両立できない関係」のことです。たとえば品質は、検品時間をかければかけるほど、高めることができます。これはグラフにすると次のように表現できます。

 しかし、これを「検品にかかるコストと品質」という関係で考えると、「品質を高めればコストが高まる」という関係になってしまいます。これをグラフにすると、次のようになります。

 両立できない2つのものが議題になっているのに、お互いに高得点を主張して平行線になっている。こんな簡単な事実が見落とされているのです。品質とコストが「トレードオフ」なのですから、それを理解して「落とし所」を戦略的に考えることが必要なのです。

 ビジネスにおいては「何を捨てるのか?」を考えて、決断するほうが大変です。「~をやったほうがよいのではないか?」という提案はそんなに難しいことではありません。しかし、投入できるヒト・モノ・時間には限りがありますので、目の前にある「やったほうが良さそうなもの」のうち、どれかを捨てなければならないのです。思考がこの段階に進むことができずに、「これはやったほうがよい」「これは大事だ」と足踏みしている会議や交渉が多いのです。    

 ZARAは「独自性」を、ミスミは「カスタム」を捨てた

 スペイン発のアパレル企業、ZARA(ザラ)は「価格と品質」というトレードオフの要素について、思い切って「品質」を捨てた企業ですね。数回着ることができれば良いと考えることで低価格を実現しました。

 また、「流行を作るのではなく流行を追う」というメジャーアパレルにとって珍しい戦略を選んでいます。「すでに世間で売れているものを後追いで作る」ことで、ファッションのリーダーであることを捨てて、在庫リスクを減らしています。

 古くは、企業戦略の教科書に必ず出てくるミスミ(ミスミグループ本社)が有名です。ミスミは、FA(ファクトリーオートメーション)・金型部品の製造販売と流通を手掛ける企業です。多くの金型メーカーを顧客として持ち、各社の注文・要望に対して、細かいカスタマイズで対応していましたが、注文単位の少なさ、それにともなうコスト高が悩みのタネとなっていました。「カスタマイズ対応とコスト」がトレードオフとなっていたのです。そこでミスミは製品の標準化を大きく進めることにして、コストを抑えること成功したのです。納品スピードを維持することも実現できました。

 理想の姿を描くことはそんなに難しいことではありません。しかし、現実には何かを捨てて、次善策へと進まなくてはいけません。理想的なオプションAをたたき台にして、オプションBをいかにうまく設計するかが成功への鍵になるのです。

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