社会・その他

コロナ休業で餓えたネズミ活発化 水族館でも異変

 新型コロナウイルスによる商業施設などの休業措置が、われわれの目に触れる都心の動物たちの生態にも影響をもたらしている。繁華街で主に夜間に活動していたネズミは人の往来が途絶え、昼間も活発に動き回るようになった。餓えたネズミが餌を求めて生息地を近隣の住宅地域に移す可能性も指摘されている。水族館では来場者がいなくなったことで、水槽内の生き物の行動の変化がみられるという。

 「被害は予想以上だ」。東京・歌舞伎町にある飲食店の男性店長(62)は頭を抱える。

 歌舞伎町では元々、深夜や早朝の路上で生ごみをあさるネズミの姿が目撃されていた。長引く休業でごみ袋を食い破られたり、店内の電気コードをかみ切られたりといった被害が増え、今では昼間に動き回る姿が頻繁に目撃されている。飲食店従業員の男性(34)は「ネズミにとって今の状況は“天国”じゃないかとさえ思う」と話す。

 全国の駆除業者らでつくる「ねずみ駆除協議会」の谷川力(つとむ)委員長(62)は「生ごみが出る繁華街はネズミにとって食べ放題の環境だった。しかし、営業中止で生ごみの量は減っており、苛烈な生存競争が起きている」と指摘する。

 電気コードなどをかみ切るのも、ごみ不足から来る行為と考えられるといい「今後、餌を求めて住宅街に大移動する可能性もある」。長期間店を閉めていると店内にネズミのフンが残っていることもあり「感染症につながるため、再開前に清掃と消毒の徹底を」と注意を呼び掛けている。

     ◇

 長期休業が続くすみだ水族館(東京都墨田区)では、水底に空いた穴からゆらりと水中に体を伸ばす姿が人気だったアナゴ科の魚・チンアナゴが休館後しばらくして、飼育員が水槽に近づくと警戒して土に潜るようになった。

 同水族館の柿崎智広飼育長によると、チンアナゴは本来、警戒心が強い生き物だが、飼育されている個体は来館者らを危害を加えない存在と認識、土に潜らず姿を見せていた。それが休業で人がいない状態が続いたため「人を忘れたのかもしれない」という。

 土に潜るとチンアナゴの健康状態を観察できなくなってしまうといい、水族館は人を思い出してもらおうと5月の大型連休中にファンに参加を募り、水槽前にタブレットを設置して、チンアナゴにモニターに映る人の顔を見せるイベントを開催した。

 イベントは奏功して、チンアナゴは再び危害を加えない人間の姿を認識するようになったという。その後も飼育員らが水槽の前を頻繁に通るなどして「訓練」し、チンアナゴが水槽内でゆらり体を伸ばす機会が増えた。

 現在は、休業前の生態にかなり近づいているといい、首を長くして水族館に来館者が戻ってくるのを待っているようだ。

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